まとめ
- 食事の面では、塩分、カリウム、お酒に注意しましょう。
- 太っている方は体重を減らすことも重要です。
- 運動をすることも、血圧に良い影響があります。
みなさんは血圧で困ったことはありませんか?健康診断で血圧が高いと言われた方や、現在高血圧症で通院されている方もいらっしゃると思います。今回はそんな方々に向けて、お薬以外で血圧を下げる方法について解説したいと思います。
なお、この記事は高血圧症の治療に薬を使うことや病院を受診することを否定するものではありません。高血圧症の治療のためには、病院への受診や内服治療も重要です。また、これから紹介する方法は内服治療中の方に対しても有効ですが、その際には主治医の先生とよく相談しながら実行するようにしてください。
血圧の測り方や家での血圧測定の意義などについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
それでは、お薬以外で血圧を下げる方法について解説していきます。
減塩
まず1つ目は、減塩です。
高血圧症に対して、減塩がどれほど血圧を低下させる効果があるかを検討した分析によると、塩分摂取量を1日平均 4.4 g 減らすことにより、収縮期血圧を 4.18 mmHg 、拡張期血圧を 2.06 mmHg 低下させることがわかりました (参考文献 1) 。
これらを受けて、日本高血圧学会による高血圧症治療ガイドライン2019では、高血圧症患者の塩分摂取量の目標を 6 g/日 未満としています (参考文献 2)。令和元年の国民健康・栄養調査では、食塩摂取量の平均は 10.1g/日 であると報告されており、減塩への意識が大切であることがわかります (参考文献 3) 。
日本人は塩分摂取量の約7割を調味料から摂取しているため (参考文献 4) 、味噌や醤油などの調味料を使う量を減らしたり、塩分を含まない他の調味料 (例えば、胡椒や唐辛子などの辛みやレモンやお酢などの酸味など) を選択したりすることも有効です。また、調味料以外にも、カップ麺や練り物などの加工品の塩分にも注意しましょう。
カリウムの摂取
2つ目は、カリウムの摂取です。野菜や果物に多く含まれるカリウムには、血圧を下げる効果が期待されます。
高血圧症患者さんを対象としたカリウムの降圧効果を検討した分析によると、カリウムの摂取量の増加によって収縮期血圧が平均 5.32 mmHg、拡張期血圧が 3.10 mmHg 有意に低下しました (参考文献 5) 。
2020年版の食事摂取基準では、カリウムの摂取量の目標を、男性では 2500 mg /日 、女性では 2000 mg /日 としています (参考文献 6) 。日本人の平均摂取量は男性 2,387 mg 、女性 2,220 mg と言われているのでまずまずではありますが、摂取量が少ない方は注意しましょう (参考文献 4) 。また、国民健康栄養調査によると、日本人の野菜の摂取量は男性 288.3 g/日、女性 273.6 g/日 であり (参考文献 3) 、健康日本21が定める 350 g/日 の目標 (参考文献 9) にはもう少し積極的な摂取が必要です。
一方で、腎臓の悪い方はカリウムを積極的に摂取することで高カリウム血症になることもあり、注意が必要です (参考文献 7) 。特にカリウムのサプリメントは、むくみ予防という広告で販売されていることもあるため、自己判断で摂取しないようにしましょう。
また、糖尿病の方も、果物の摂取によって血糖値が上昇することが懸念されるため、1日あたり80 kcal程 (例えば、バナナなら1本、リンゴなら半分) にすることが求められています (参考文献 8) 。
減量
3つ目は、減量です。太っている方は体重を減らすことも大切です。
BMIが 25 kg/m2 以上の状態は肥満と言われています。肥満について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
肥満と高血圧症の関係は複数の研究で指摘されています (参考文献 2) 。体重を減らすことによる血圧低下効果については、体重が 1 kg 減ると収縮期血圧は 1.05 mmHg 、拡張期血圧は 0.92 mmHg 低下すると報告されています (参考文献 10) 。
減量によって血圧が低下する理由については、食事量の減少に伴って塩分摂取量が減少したからではなく、減量によって血圧をあげるホルモンの値が低下したことが関係している可能性も示唆されています (参考文献 11) 。
節酒
4つ目は、節酒です。お酒を飲んですぐは血圧が下がりますが (参考文献 12) 、習慣的な飲酒は高血圧症につながる危険があることが知られています (参考文献 13) 。
また、エタノール換算で24 g/日以上のお酒を飲んでいる人が摂取量を半分にした場合、収縮期血圧が 1.18-5.50 mmHg 、拡張期血圧が 1.09-3.97 mmHg 低下し、144 g/日 (ビール3.5 L、日本酒7合、ワイン2本弱相当) 飲んでいる人において最も効果が高かったと言われています (参考文献 14) 。
高血圧症治療ガイドライン2019においても、おおよそ日本酒 1 合、ビール中瓶 1 本、焼酎半合、ウィスキーダブル 1 杯、ワイン 2 杯相当/日以下、女性はその約半分を目標とすることが勧められます (参考文献 2) 。
運動
5つ目は、運動です。運動は大きく、有酸素運動とレジスタンストレーニングに分けられます。
まずは有酸素運動についてです。有酸素運動による降圧効果を検証した研究によると、有酸素運動は収縮期血圧を 3.0 mmHg 、拡張期血圧を 2.4 mmHg 低下させたと報告されています (参考文献 15) 。
次にレジスタンストレーニングについてですが、特に等尺性レジスタンス運動については、収縮期血圧を 1.8 mmHg 、拡張期血圧を 3.2 mmHg 低下させることが報告されています (参考文献 16) 。
運動量などについて詳しく知りたい方は、以前の記事「有酸素運動と筋トレの違いは?糖尿病治療のプロが答えます~お腹の脂肪を減らしたいあなたへ~ 」 や私のYouTube などもご参照ください。
さて、今回はお薬以外で血圧を下げる方法について、食事、減量、運動の面から解説しました。
どれも大きく血圧を下げるわけではありませんが、実行していただくことによって血圧に良い影響をもたらします。実施できそうな方法があれば、是非生活に取り入れてみてください。ただし、すでに治療中の方については、血圧が下がり過ぎる可能性があるため、主治医の先生とよく相談しながら実施するようにしてください。
COI
本記事について、開示すべきCOIはありません。
9:健康日本 21