卵はコレステロールが多いから1日1個までは本当?

カテゴリ:生活習慣

公開日:2022/07/08/

最終更新日:2022/08/16

まとめ

  • 実はコレステロールの摂取上限は定められておらず、明確なことは言えない。
  • 卵を毎日1個食べても問題なさそうだが、食べ過ぎには注意。
  • 悪玉コレステロールの値が高い方の場合は、卵の摂取は控えめに。

卵はさまざまな料理に利用される身近な食品ですよね。値段が安くて栄養価が高いですし、多くの方が日常的に食べていると思います。
さて皆さんは「卵は1日1個まで」という話を聞いたことはありませんか?昔から1つの目安としてよく知られている基準だと思います。

他にも、「卵をどのくらい食べてよいのか?」という疑問に関して、世の中には「卵はコレステロールが高いから毎日食べてはダメ!」「いやいや、いくら食べても問題ないよ!」というような情報がたくさんあります。「結局1日に何個まで食べてもいいの?」と混乱してしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。実際のところはどうなのでしょうか?

今回は「卵は1日何個まで食べて OK なのか」について、内科専門医が厚生労働省の基準や、過去の研究データに基づいて解説していきます。

この記事を書いた医師の名前

大坂 貴史

Takafumi Osaka

医師 / 糖尿病専門医 / 医学博士

『糖尿病で不幸になる人を少しでも減らす』ために Twitter、YouTubeニュースレターで医学情報を発信しています。 趣味は料理とワイン。合氣道、居合道、弓道、有段者です。健康は筋肉!

日本人の主要なコレステロール摂取源である卵

卵1個に含まれるコレステロールは約 200 mg と言われており、そのほとんどは卵黄です (参考文献 1) 。2005年の厚生労働省が定めた『日本人の食事摂取基準』によると、コレステロールの摂取量の上限は、一日当たり男性で 750 mg 、女性で 600 mg とされています (参考文献 2) 。

日本人ではコレステロールの摂取源として卵が最も多くて食品全体の約半分を占めますが、肉や魚などもコレステロールを含んでいます (参考文献 1) 。これらのデータから単純に考えると、卵の摂取量は確かに1日1個までが良さそうに見えますね。

コレステロールをたくさん摂取したからといって、必ずしもそれに見合うだけの血中コレステロール値が上がるわけではない

ただし、先ほど説明した「コレステロールの摂取量の上限は男性 750 mg 、女性 600 mg 」という数値には、実は十分な科学的根拠がありませんでした。コレステロールは体内で合成されるので、食事によって摂取されるコレステロールは体内で合成されるコレステロールの 1/3  ~ 1/7 を占めるに過ぎません (参考文献 3) 。

単純に食事で摂取すればするほど体内のコレステロール量が増えるというわけではなく、コレステロールが過剰なときには体内で合成される分のコレステロール量が減るように調整されます (参考文献 4) 。なので、食事中のコレステロール量と血中のコレステロール量は、必ずしも比例しないのです。

先ほどの『日本人の食事摂取基準』は5年ごとに改定されるのですが、前述の2005年版から見て次の次の改訂 (つまり10年後の改訂) から「食事中のコレステロールをどこまで制限すればよいかを一律に定めることは難しい」という判断がされるようになりました。

これにより、2015年版の『日本人の食事摂取基準』では「コレステロール摂取量の上限を設けない事とする」と記載されるようになりました (参考文献 3) 。そうなると「あれ、実は卵はいくら食べても問題ないのかな?」と感じますよね。

卵を毎日1個程度まで摂取するのは問題なさそう

しかし、アメリカ人を対象に行われた6つの研究をまとめて解析してみたところ、「卵やコレステロールの摂取量が多い方では心臓や血管の病気が起きたり亡くなったりすることが多い」という怖い結果が出ました (参考文献 5) 。この研究だけでは明確なことは言えませんが、卵の摂りすぎが健康に悪い可能性は否定できません。毎日3個も4個も食べるなどの極端なケースは心配ですよね。

一方で、中国で行われた複数の研究をまとめた分析では、週に7個以上 (つまり1日平均1個以上) のペースで卵を摂取した方々でも、週に1個未満しか卵を食べない方々と比べて、心臓や血管に関する病気の発生率や死亡率は特に変わりませんでした (参考文献 6) 。

また、同じく中国で行われた50万人を対象とした研究によると、卵を毎日食べる方々(1日あたり平均で0.76個) では、ほぼ卵を食べない方々と比べると、むしろ心臓や血管の病気が起きる頻度が少なかった、と報告されました (参考文献 7) 。

これらの結果を見る限り、少なくとも卵を毎日1個程度まで摂取するのは問題なさそうです。

悪玉コレステロールが高い方にとっては、毎日卵を1個以上食べるのは多すぎ

ただし、LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールの値が高い方の場合は話が変わります悪玉コレステロール値が高い方は、動脈硬化から将来心筋梗塞や脳梗塞になりやすい事が知られており、生活習慣や運動、食事などへの配慮が必要です (参考文献 8) 。

その一環として、日本動脈硬化学会はバランスの良い食事として、食物繊維を多く含む大豆製品や海藻、野菜の摂取を増やすことに加えて、コレステロールの1日あたり摂取量を 200 mg 以下にすることも推奨しています (参考文献 9) 。

先程述べたように卵1個のコレステロール量が 200 mg なので、これだけで目安の数値に達しますね。したがって、悪玉コレステロールが高い方にとっては毎日1個以上卵を食べるのは多すぎです。

卵料理を連日続けないようにしたり、卵を食べた日の前後は卵以外でコレステロールの高い食材は控えたりという工夫が必要です。

卵の摂取はほどほどにしましょう!

最後にまとめです。健康な方は、卵を毎日1個食べる程度ならば問題はなさそうです。ただし、食べすぎた場合の健康面への悪影響は現時点ではっきりしていないので、ほどほどにしておきましょう

卵に含まれるコレステロールの摂りすぎは、脂質異常症 (悪玉コレステロールの増加や、善玉コレステロールの低下) や心臓など循環器系の病気を予防する観点からは避けるべきでしょう (参考文献 10) 。

特に悪玉コレステロールの高い方は、1日あたりのコレステロール摂取量は 200 mg 未満が目安になるので、卵を含めてコレステロールの多い食材の摂取は控えめにしてくださいね。

COI

本記事について、開示すべき COI はありません。