有酸素運動と筋トレの違いは?糖尿病治療のプロが答えます~お腹の脂肪を減らしたいあなたへ~

カテゴリ:運動

公開日:2022/04/14/

最終更新日:2022/08/16

まとめ

  • 有酸素運動は中強度週150分以上を目安に毎日行うのが良い!
  • 筋トレは週2回以上を目標にして強度×回数で効果があがる!
  • どちらもそれぞれの有利な効果は違うけど、少しでもすることが重要。できれば両方行うのがオススメです

この記事を書いた医師

大坂 貴史

Takafumi Osaka

医師 / 糖尿病専門医 / 医学博士

『糖尿病で不幸になる人を少しでも減らす』ために Twitter、YouTubeニュースレターで医学情報を発信しています。 趣味は料理とワイン。合氣道、居合道、弓道、有段者です。健康は筋肉!

こんにちは。医師の大坂です。

今回は、「健康のために運動をはじめてみようとは思っているけど、公園でランニング?それともジムで筋トレ?」というご質問にお答えしようと思います。

私は、今までの医師としての経験で運動を始めて健康を手に入れた人を沢山診てきました。

これを読み、運動ってこんな事から始めたら良いんだ!と感じていただけることを願っています。

なぜ私が運動療法に興味を持ったのか。多くの患者さんを診てきて感じたこと

私は糖尿病内科医として多くの患者さんを診察しながら、そのほとんどの方は「運動不足」という事を自覚していてもなかなか解決できないことに悩んでいました。そして、それは患者さんだけでなく日本人全体の問題なのです。そして、「運動をしている人」も「運動を教えている人」も、どこか特殊な人で自分とは違うイメージがないですか?

運動はもっと身近で、しかもすごく簡単な事なのです。そして、一度、習慣化すれば身体や血液検査の結果が大きく変わるのです。

そうして、人生まで変わった方をたくさん診てきました。少しでも多くの方にそういった体験をして欲しいと思っています。

まずは「運動」の種類について簡単に解説

これからお話しするのは、主に「有酸素運動」と「筋トレ」の違いについてです。

なので、まずこれらの意味について簡単にご説明します。

運動の分類には、「有酸素運動」と「無酸素運動」という分け方がありますが、実は「有酸素運動」「レジスタンストレーニング (筋トレ) 」という分け方が一般的です。

そう、筋トレとは「レジスタンス (筋肉に一定の負荷をかける) トレーニング」と同じ意味なんです。

一例を挙げると、有酸素運動はウォーキング、ジョギング、サイクリング、スイミングなどです。一方、筋トレはスクワット、腕立て伏せ、腹筋などです。

有酸素運動がほぼ全身の筋肉をまんべんなく使うのに対して、筋トレは一部の筋肉を集中的に使っているというのは、皆さんも想像しやすいと思います。

また、他にも複合運動としてバランストレーニングなどといった分類もあります。

「FIIT」を考慮したトレーニングが重要

さっそく本題へ入りましょう。

今回は、 12 本の文献を参考に皆さんに「ベストなトレーニング法」についてお教えします。

結論から言うと……

一人ひとりにピッタリなトレーニング法を探すには「FITT」の考え方を知ることが重要なんです!

運動の内容について評価するためにはFITTつまり運動の頻度 (F:frequency) ・強度 (I:intensity) ・持続時間 (T:time or duration) ・運動の種類 (T:type of exercise) について考えることが重要とされています。

では、

☞有酸素運動

☞筋トレ

の順で確認していきましょう。

有酸素運動のFIIT:ウォーキングなら週に150分以上、ジョギングなら75分以上をオススメ

まず、有酸素運動のFITTについて解説していきましょう。

有酸素運動の頻度は目的によって「最適な回数」が変わる可能性はありますが、日本のガイドライン[参考文献.1]では、できるだけ毎日行うことが推奨されていることをご存知ですか?

また、有酸素運動の「強度」については、ブドウ糖を消費するためには高強度、脂肪を消費するためには中強度がよいとされているのです[参考文献.2][参考文献.3]。

ちなみに高強度の運動はランニング、サイクリングなどです。

一方、中強度の運動は水泳、ピラティス、早歩きなどです。

では、有酸素運動の「時間」についてはどれくらいが最適なのでしょうか?

アメリカの国民健康調査で88,140人を対象とした研究によると、運動による死亡率の低下効果は週に10分の運動から始まり、より長い時間でその効果が高くなると言われています[参考文献.4]。

その中でも重要なこととして、「頻度×強度×時間」によって運動の効果が規定されています。

WHOが定めるガイドラインでは頻度については言及されておらず、中強度の運動では週に150分以上、高強度の運動だと75分以上と記載されています[参考文献.5]。

同じ強度であれば運動の種類は、何を選んでも大きな差はありませんが、変形性膝関節症などで膝が悪い人には水中歩行をオススメしたいと思います[参考文献.6][参考文献.7]。

ちなみにウォーキングの場合、週に150分以上ということは、毎日するなら1日約22分行えば上記を達成できることになります。それならできるかも!と思える方もいらっしゃるのではないでしょうか?

筋トレのFIIT:週に2回以上、「強度×回数」を増やすことをオススメ

続いて、筋トレのFITTについて解説します。

筋トレの「頻度」は、有酸素運動と比べて毎日することが良いという根拠が乏しいです。

一例として、筋肉を大きくすることを目的とする場合、運動量を一致させると、週1回より週2回の方が効果的でありましたが、週3回の場合は週2回より効果的かどうかはわからないと報告されています[参考文献.8]。

そのため、WHOのガイドラインでも少なくとも週2回という表記になっています[参考文献.5]。

重要なことは、筋トレの場合は有酸素運動と違い、使う筋肉の部位が限定的ですので、部位を変えて筋トレを行えば毎日行っても問題は無いということです。

そして、「強度及び時間 (回数) 」に関しては、現在の所、2017年に発表された 25 の研究をもとにしたメタ分析で高強度であっても低強度であっても総負荷量(強度×回数)の多い方が良いと報告されています[参考文献.9]。強度×時間(回数)が重要ですので、WHOのガイドラインでも強度や回数に対する具体的な基準はありません[参考文献.5]。

知ってた?有酸素運動と筋トレの「本当の」違い。気になるお腹のプニプニには結局どっちが効く?

まとめとして「有酸素運動」と「筋トレ」の効果の違いを解説しましょう。

どちらも身体活動として心臓病、2型糖尿病、がんといった疾病予防・管理に寄与し、うつや不安などの症状を改善することが分かっています[参考文献.5]。

読者の皆さんの中にも気になる方が多いであろう、お腹の脂肪を減らすためには、有酸素運動、筋トレどちらが良いのでしょうか。304人を対象としたランダム化比較試験で、どちらも差がないことが報告されています[参考文献.10]。

また、有酸素運動は筋トレに比べて、体力を増やします[参考文献.11]が、筋肉を増やすのには筋トレの方が有利です[参考文献.12]。それぞれの目的に応じたトレーニングが有効ですが、やはり両方を行う事でどちらの効果も得やすくなるので、有酸素運動と筋トレどちらもすることをWHOのガイドラインでも勧められています。[参考文献.5]。

おまけ:私がやっている運動法も教えます

ここまでは皆さんへのオススメ運動法をご紹介してきましたが、最後に私が運動を始めた時の運動内容についてもご紹介します。

私は「体力をつけたい」「筋肉をつけたい」という気持ちで運動を始めました。

最初は1日5分間の筋トレをするという目標を立て、しんどい時には1分、もっとしたい時には10分から始めました。最初は「運動したくない」という日もありましたが、1分ならできるだろうと続けていくうちに気が付くと毎日できるようになっていました。

「少ない量から始める」というのも大切なコツ[参考文献.5]です!

何かをはじめたいけど、何をしたらいいかわからない方向けにこちら私と理学療法士さん、作業療法士さんで考案した筋トレと有酸素の両方の要素を兼ねそろえたこちらの動画をお勧めします!皆さんの体力に合わせて3つの強度を用意しており、50万回以上再生されています!

自宅でできて、好きな時にできますので、気軽に始めて見てくださいね!

参考文献

COI

本記事について、開示すべき COI はありません。

なお、紹介したYouTubeチャンネルはこの記事を執筆した大坂が管理・運営しておりますが、一切の収益を受け取っておりません。