「1日1万歩」は本当?どのくらい歩くのが健康によいのか、ご存知ですか?

皆さんは身体を動かそうと考えたとき、どんな運動やスポーツを思い浮かべますか?

スポーツ庁が令和4年度に調査した「この1年間に行った運動・スポーツの種目」では、ウォーキングの割合が最も高く、アンケートに答えた人の 62% でした (参考文献 1) 。

ただ、実際にウォーキングをするとなると、「どれくらい歩いたらよいのだろう?」と疑問に思うかもしれません。昔からよく耳にするのが、「1日1万歩」という言葉ですが、一体この歩数は何に基づくものなのでしょうか。

今回の記事では、この「1日1万歩」について、掘り下げていきます。

まとめ

  • 1日1万歩に満たなくても死亡率低下に効果がある。
  • 65歳未満で8,000歩、65歳以上で6,000歩が目安
  • 「普段より1,000歩多く」を目標に身体活動を増やしましょう!

大坂 貴史

Takafumi Osaka

「健康日本21」と「1日1万歩」

「1日1万歩」の初登場は、20年以上前に遡ります。

厚生労働省が、これからの少子・高齢社会を健康で活力あるものにするため、生活習慣病の発症や重症化予防の徹底、健康寿命の延伸等を目標として「健康日本21」という方針を2000年に定めました。その中で、「1日1万歩」という表現が用いられています (参考文献 2) 。

身体活動量と死亡率などとの関連をみた疫学的研究 (参考文献 3) で、週あたり 2,000kcal の運動をしているほうが死亡率が低かったことから、週に 2,000kcal 、つまり1日あたり 約 300kcal のカロリー消費に相当する運動として、10,000歩という歩数が算出されています (参考文献 2) 。

海外の文献から週当たり2000kcal(1日当たり約300kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されている6)。歩行時のエネルギー消費量を求めるためのアメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて、体重 60kg の者が、時速 4km (分速70m) 、歩幅 70cm 、で10分歩く (700m、1000歩) 場合を計算すると、消費エネルギーは 30kcal となる。つまり1日当たり 300kcal のエネルギー消費は、1万歩に相当する。

歩行時のエネルギー消費量を求めるためのアメリカスポーツ医学協会が提示する式11)
水平歩行時の推定酸素摂取量 (ml/kg/分) =安静時酸素摂取量 (3.5ml/kg/分) +0.1×分速 (m/分)

身体活動・運動|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

しかしながら、この疫学的研究 (参考文献 3) は歩数と死亡率について直接評価した研究ではなく、またこの研究は1986年に発表されたものである (研究の対象者の追跡期間は1962年から1978年) ことからデータが古く、今の時代から考えると不正確な可能性があります

「1日1万歩」に満たなくても効果はある

実は「1日1万歩」以降、歩数と死亡率について評価した研究が複数発表されています。

例えば30,000人以上の成人を対象とした17件の研究をまとめた報告 (参考文献 4) では、1日に1万歩未満の歩数でも毎日1,000 歩増えるごとに死亡率が 6〜36% 減るとされています。

さらに別の15件の研究 (対象者数は約50,000人) をまとめた報告 (参考文献 5) でも、歩数の増加とともに死亡率が下がっていますが、死亡率が低下する歩数には上限があると結論づけられています。

具体的には、60歳以上の成人で1日あたり6,000〜8,000歩まで、60歳未満の成人では1日あたり8,000〜10,000歩までは死亡率の低下が見られるものの、それ以上の歩数では横ばいとなっているのです。

これらのことから、健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 (参考文献 6) では1万歩ではなく、成人では8,000歩以上、高齢者では6,000歩以上を目標とすることが定められています。

歩数を把握して少しずつ活動量を増やしましょう!

ここでお伝えしたいことは、

  • 目標値に達していない人は、目標値を目指して歩数を増やしてみる
  • 自分の体調と相談しながら、決して無理はしない

ということです。

目標値の歩数を達成しないと意味がないというわけではありません。目標値の歩数を参考に、適度な運動を心がけることが大切です。

そのために、まずは自分の歩数を把握してみましょう。現代ではスマートフォンなどで簡単に歩数を管理できますし、自分がどれくらい歩いているかを確認してみて下さい。

その上で、目標値に届いていない人は、最初は現状より1,000〜2,000歩、歩数の増加を目標にしてみましょう

厚生労働省が2013年に作成した「健康づくりのための身体活動基準2013・アクティブガイド」 (参考文献 7) でも、まず1日あたり10分、身体活動を増やすことを目標としています。

最初から高い目標を基準にすると怪我のリスクも高まります。怪我をしてしまうとやる気も削がれやすいですよね。ですので、最初は「普段より1000歩多く!」を目標として進めていきましょう。

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