まとめ
- 妊娠糖尿病とは妊娠中に血糖値が高い状態のことです。
- 血糖値の管理がお母さんとお子さんのために重要です。
- 妊娠糖尿病になったことがある人は糖尿病に移行しやすいため、定期的な検査が必要です。
妊娠糖尿病とは?
みなさんは妊娠糖尿病という病気をご存知でしょうか?
名前からして妊娠中の糖尿病かなと思うかもしれませんが、実は妊娠中に初めてわかる高血糖には2つの段階があります。それは「妊娠糖尿病」と「妊娠中に明らかになった糖尿病」です。
「妊娠糖尿病」はブドウ糖負荷試験を行って、「空腹時血糖値が 92 mg/dL以上」「1時間値が 180 mg/dL以上」「2時間値が 153 mg/dL以上」のいずれかを満たした場合に診断されます (参考文献 1) 。
それに対して、「妊娠中に明らかになった糖尿病」は以前に解説した糖尿病の基準 (https://lumedia.jp/checkup/2493/) の一部である「空腹時血糖値が126 mg/dL以上」もしくは「HbA1cが 6.5%以上」を妊娠中に満たした場合に診断されます (参考文献 1) 。こちらには、妊娠前に見逃されていた糖尿病と、妊娠中の糖代謝変化の影響を受けた糖代謝異常、および妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれます。
診断基準は「妊娠中に明らかになった糖尿病」よりも「妊娠糖尿病」の方が厳しくなっています (参考文献 1) 。
妊娠中に血糖値が高いと、赤ちゃんとお母さんの妊娠中や出産中に合併症が起きやすくなるため治療が必要となります (参考文献 1) 。
妊娠中の治療法と生活習慣の注意点
妊娠中は糖尿病の飲み薬は使えないため、適切な食事療法や運動療法を行うことが大切です。それでも血糖値が高い場合はインスリンを使用します (参考文献 2) 。
食事療法は赤ちゃんへの栄養にも関係するため、単純に減らせばよいというものではなく、妊娠前よりも目標摂取エネルギー量は多くなりますが、体重が増えすぎないように気をつけましょう。体重を定期的に測って医師と相談するとよいでしょう。
運動療法は血糖値を下げたり、体重をコントロールしたりするだけでなく、子癇前症 (しかんぜんしょう) 、妊娠高血圧症、分娩合併症、産後うつ、新生児合併症のリスクなどを減少させるとされているので重要です (参考文献 3) 。
WHOの身体活動ガイドラインでは週に150分の中強度の有酸素性の身体活動が一つの基準とされており、産前ですでに運動されている人はそれを続けることも可能です。しかし、切迫早産や頸管無力症など強度の高い運動が難しい場合もありますので、具体的な運動内容は主治医に相談しましょう。
産後のステップも押さえておこう
また、妊娠糖尿病と診断されたことがある女性は出産後に2型糖尿病に移行しやすいということが知られています。そのため、産後6~12週にはブドウ糖負荷試験を行うことが強く勧められています (参考文献 4) 。
この結果で境界型糖尿病と診断された方や肥満がある方は、体重の調整や運動などの生活介入と定期的な検査が必要とされています。こちらについては過去の記事 (https://lumedia.jp/lifestyle/3496/) もご参照ください。
今回は妊娠糖尿病について解説しました。お母さんにとってもお子さんにとっても重要な病気ですので、是非知っておいてくださいね。
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本記事について、開示すべきCOIはありません。