健康診断で「血糖値が高い」と言われたら?HbA1c の基準値などを専門医が解説!

カテゴリ:健康診断

公開日:2022/09/22/

最終更新日:2022/09/18

まとめ

  • 空腹時血糖値 126 mg/dL 以上かつ HbA1c 6.5% 以上の方は要精密検査です!
  • 血糖値が高いと言われたらまず病院を受診しましょう。
  • 少なくとも受診まではショ糖 (砂糖の主成分) を多く含むものを控えておきましょう。

皆さんは健康診断や人間ドックなどで「血糖値が高い」と言われた事はありませんか?「血糖値が高い?糖尿病なのかな?」「これからどんな検査をするのかな?」「病院には行くべき?」などの疑問を抱える方は多いかと思います。

この記事では、「健康診断や人間ドックなどで血糖値が高いと言われたら、どうしたらよいのか」について医師が解説します!

この記事を書いた医師の名前

大坂 貴史

Takafumi Osaka

医師 / 糖尿病専門医 / 医学博士

『糖尿病で不幸になる人を少しでも減らす』ために Twitter、YouTubeニュースレターで医学情報を発信しています。 趣味は料理とワイン。合氣道、居合道、弓道、有段者です。健康は筋肉!

手元にある血糖値の検査結果を確認しましょう!

手元に健康診断や人間ドックの検査結果はありますか?今回は検査結果の「血糖値」「HbA1c (ヘモグロビン・エー・ワン・シー) 」の二か所を確認してみましょう。

血糖値には主に「空腹時血糖値」と「随時血糖値」の2つがあります。10時間以上食事やカロリーの含んだ水分を食べたり飲んだりせずに検査を受けた場合の数値を「空腹時血糖値」、それ以外の血糖値は「随時血糖値」としています (参考文献 1) 。検査を受けた日、検査前にご飯を食べたかを思い出しましょう。

また、「HbA1c」は検査前の約3か月間の血糖値を反映した値です (参考文献 2) 。

 さて、健康診断や人間ドックでは、どれぐらいから高血糖との指摘されるのでしょうか。

どのくらいから高血糖なの?

施設などによって多少異なりますが、全国健康保険協会の基準 (参考文献 1) では空腹時血糖値 100 mg/dL 未満を正常の値としています。
日本人間ドック学会の基準 (参考文献 3) では次のようになっています。

  • 空腹時血糖値が 100 mg/dL 以上 109 mg/dL 以下かつ HbA1c が 5.9% 以下、もしくは 空腹時血糖値が 99 mg/dL 以下かつ HbA1c が 5.6% 以上 5.9% 以下の場合は「軽度異常
  • 空腹時血糖値 110 md/dL 以上 125 mg/dL 以下、 HbA1c が 6.0% 以上 6.4% 以下、空腹時血糖値 126 mg/dL 以上かつ HbA1c が 6.4% 以下、空腹時血糖値 125 mg/dL 以下かつ HbA1c が 6.5% 以上の場合は「要再検査
  • 空腹時血糖値 126 mg/dL 以上かつ HbA1c が 6.5% 以上の場合は「要精密検査

人間ドックでは要再検査以上で内科受診とわかりやすいですが、他の健診ではあまり細かく分かれていません。健康診断を受けた方で、受診するべきかどうか悩んだ方は、人間ドックの結果を参照しましょう。

糖尿病の診断はどのように行われるの?

さて、病院では糖尿病の診断はどのように行われるのでしょうか?糖尿病の診断基準は次のようになっています (参考文献 4) 。

①糖尿病型を2回確認する

糖尿病型」とは、

  • 空腹時血糖値 126 mg/dL 以上
  • ブドウ糖負荷試験 (※) で2時間値が 200 mg/dL 以上
  • 随時血糖値 200 mg/dL 以上
  • HbA1c 6.5% 以上

のどれかに該当する状態のことを指します。健診の結果と合わせて2回基準を満たせば、「糖尿病」という診断になります

ただし、HbA1cだけでは診断できず、必ず血糖値が基準を満たす事が必要です。まれにHbA1cは、正しい血糖コントロールを反映しない場合があるからです (参考文献 2) 。

※「ブドウ糖負荷試験」は主に病院で行う検査で、 75 g のブドウ糖を含んだ飲み物を飲んで、どれぐらい血糖値が上がるかを見るものです。血液検査は4~5回行いますが、ブドウ糖を飲む前と2時間の結果を診断に用います。

②糖尿病型を1回確認し慢性高血糖症状の存在を確認する

糖尿病型が一回と、糖尿病の典型的な症状 (喉の渇き、多飲、多尿、体重減少) の存在か糖尿病性網膜症 (目の所見) があれば、それだけで糖尿病の診断となります。糖尿病性網膜症はほとんどの方が症状はなく、眼科での診察が必要です。

意外に思われるかもしれませんが、尿中に出る糖である「尿糖」は診断には用いません。

検査に来る患者さんの例

ここまで読んで「難しい!!!」と思った方も多いと思うので、実際に具体例をみてみましょう。

  • Aさんは健診で空腹時血糖値 130 mg/dL でした。受診した病院で随時血糖値が 220 mg/dL でした。Aさんは糖尿病と診断されました。
  • Bさんは人間ドックで空腹時血糖値 120 mg/dL 、HbA1c 6.6% でした。受診した病院でブドウ糖負荷試験を行い、2時間後の値が 220 mg/dL でした。Bさんは糖尿病と診断されました。
  • Cさんは人間ドックで空腹時血糖値 120 mg/dL 、 HbA1c 6.6% でした。受診した病院で空腹時血糖値 115 mg/dL 、 HbA1c 6.6% でした。Cさんは HbA1c のみしか満たしていないので糖尿病とは診断できません。
  • Dさんは健診で空腹時血糖値 200 mg/dL でした。受診した病院での目の検査で糖尿病性網膜症を認め、糖尿病と診断されました。

基本的には2回以上の検査が必要という事を覚えておきましょう!Cさんのように、診断基準を満たさなかった方は、3-6か月以内に再検査をする必要があります (参考文献 4) 。

糖尿病に関連する他の検査

糖尿病に関して、病院では他にどのような検査が行われるのかを説明します。

糖尿病には様々な分類があり、それぞれ適切な治療方法が違います。例えば、血糖値をコントロールするホルモンの1つである「インスリン」が身体から出なくなったタイプの糖尿病には、治療にインスリンが必要です。肝臓が原因であれば肝臓の治療が必要です。
ですので、どういったタイプの糖尿病なのかについて調べる事が重要なのです (参考文献 5) 。

患者さん各々がどのタイプの糖尿病かを知るために、インスリンが身体からどれくらい出ているのか (インスリン分泌能) や、糖尿病の原因となる自己抗体、肝臓や膵臓などの病気が無いかなどを調べます。なかには使っているお薬が原因で糖尿病になる方もいらっしゃいます。

受診までの間にした方がよいことはあるの?

以上のように、健康診断や人間ドックで引っかかった場合には病院へ受診していただきたいのですが、受診までの間にできることはあるのでしょうか?

先ほども説明したように、糖尿病の種類によって根本の治療は大きく変わります。しかし共通して言えるのは「ショ糖 (砂糖の主成分) を多く含んだ食品を控えたほうがよい」ということです。

ショ糖を多く含む飲食物の具体例としては、ジュースをはじめとした清涼飲料水があります。ジュースにはショ糖が多く含まれており、それによって血糖値が高くなるため、ショ糖や果糖ブドウ糖液糖などが含まれているジュースは控えるのがよいでしょう (参考文献 6) 。

今回は健診や人間ドックで血糖値が高いと言われたときにどうしたらよいかについて解説しました。

糖尿病はほっておくと重大な合併症を引き起こす病気です。症状がなくてもほっておかず、早めに病院を受診しましょう!その時には必ず健診の結果を持っていきましょう!

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