何気なくずっと座っていませんか?座ることの悪影響を内科医が解説します

まとめ

  • 長時間座っていることは、実は健康に悪いとご存知でしたか?
  • 日本は「世界で最も座りすぎの国」。テレビ視聴やスマホを触るなどで座っている時間を減らすのが健康への近道です。
  • 一方、青少年の読書などは推奨されます。お子さまの勉強や読書は継続してくださいね。

大坂 貴史

Takafumi Osaka

突然ですが、皆さまは「自分が1日に何時間座っているか」考えたことがあるでしょうか?

今回は「座っていることの健康への影響」について学んでいきましょう。

 「座位行動」とは

静かに座っている状態を、医学的には「座位行動」といいます。詳しくご説明すると、その正式な定義は、「日中に座ったり横になったりしていてエネルギー消費量が 1.5Mets (メッツ) を下回っている状態」です (参考文献 1,2) 。

普通にデスクワークや読書、会話などをしている状態は 1.5Mets 以下なので、これらの時間を「座位行動」としてカウントします。

参考までに、座っている状態でも、芝刈り機を操作したり、ストレッチをしたりしているときのエネルギー消費量は 2.5Mets 程度なので「座位行動」には該当しません (参考文献 3) 。

 とにかく「座りすぎ」には気を付けよう

座っている時間の長さによる健康への悪影響が初めて注目されたのは、今から約70年も前である1953年の研究にまで遡ります。当時のロンドンの交通局や郵便局で働く方々を対象に心臓や血管の病気の頻度を調べたところ、バスの車掌は運転手よりも、また、郵便配達員は電話交換手や事務員等よりも心臓や血管に関する病気が少ないことがわかりました。

この事実から「仕事中に座っている時間が長い職業だと健康に悪いのではないか」と推察され、その後様々な研究が行われました (参考文献 4) 。

そして現在では、大人が長時間座っていると、心臓や血管の病気だけでなく、がんや2型糖尿病のリスクを高めることがわかっています。さらに、死亡率も上昇してしまうのです (参考文献 5)。

また「座り過ぎによる健康への悪影響」は「運動による健康への良い影響」で打ち消しきれないこともわかっています。つまり、ジムに通うなどして積極的に運動を頑張っている人でも、やはり座り過ぎには気をつけないといけません (参考文献 6) 。

世界で最も座りすぎの私たちは一体何をすればいい?

実は世界20か国の49,493人を対象とした研究の結果、日本人の平日の座位時間は中央値で7時間でした。これはサウジアラビアと同率トップで、「日本は世界で最も座りすぎの国」だと報告されています(参考文献 7)。

さて、では「座位時間を何分以下にすべきか」の基準はあるのでしょうか。

結論から申し上げると、各国のガイドラインでも座位時間の上限や下限は設定されておりません。未だ、どのくらいの座位時間であれば安全なのか、については十分な研究がされておらず、はっきりしたことは言えないのです (参考文献 8) 。

それではどうしたらいいんだ!という話ですが、結局、座りっぱなしの時間をとにかく減らすことが大切です。座る時間を、どのような身体活動 (強くても弱くても) に置き換えても健康効果が得られます (参考文献 5) 。

ただ、子供の場合は「座って勉強するのがNG」というわけではありません。青少年 (5歳から17歳) において、読書、宿題などの座位行動はテレビやスマホと比べると必ずしも有害とは言えず、むしろ学業成績の高さと関連します。その他にも、パズルをする、絵を描く、工作、歌う、音楽演奏などは青少年の発育にとって重要であり、健康被害よりもメリットが大きいとされています (参考文献 8) 。

あなたの健康をこれからも守るために

この記事を読んで、例えばお仕事中に何時間も座っていることに気付いたら意識して立ち上がりストレッチをするなど、小さなことからチャレンジしてみてください。

こちらは、筋トレ×有酸素を皆さまと一緒にできるように作成した動画です。是非トライしてみてくださいね!

最後にまとめです。勉強や読書の時間を削るのではなく、テレビやスマホなどの座位時間をできるだけ減らすように心がけましょう。できれば、その時間を運動に変えられると理想的ですね。

健康を手に入れるために頑張りましょう!

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本記事について、開示すべき COI はありません。