「目から紫外線を浴びると、肌が黒く日焼けする」って本当ですか?

まとめ

  • 「目から入る紫外線で肌が黒くなる」との報道があります。
  • この話は動物実験でのデータしかなく、実際にヒトで検証されてはいません。
  • ヒトはネズミとは違うので、動物実験のみによる健康情報にはご注意を。

「目から日焼けすると肌が黒くなる」というお話を聞いたことはありますか?

「日焼け止めや衣服で肌の日焼け対策を行っても、目から紫外線が入るだけでも紫外線の刺激が脳へと届いて皮膚のメラニン色素が活性化し、肌が黒くなってしまう!シミやソバカスを増やしたくないなら、目の紫外線対策が必要だよ。」という説です。

この話は、2010年には日テレの『世界一受けたい授業』という TV 番組で紹介されています (参考文献 1) 。

また、有名なメガネメーカーである Zoff の HP では、次のように記されています (参考文献 2)。

目から入る紫外線に要注意!
肌に日焼け止めを塗るのは紫外線対策の基本ですが、目に紫外線が当たると目の細胞にダメージが生じ、シミやそばかすの原因となるメラニンが体全体に増加します。

つまり、目の紫外線対策を怠れば目から紫外線が吸収され、シミやそばかすはもちろん、白内障や眼精疲労にもつながるといわれています。

とくに紫外線が強くなる夏場は目から入る紫外線をカットすることが大切。高い UV カット機能を持った Zoff のサングラスをかけると、裸眼の状態に比べ、メラニンの増加を半分以下に抑えられるといわれています。

https://www.zoff.co.jp/shop/k/k3/

また、目薬などで有名な参天製薬も、「直接肌に紫外線を浴びることだけでなく、目に入る紫外線も日焼けの一因となる」のは事実だと明言しています (参考文献 3) 。アンケート調査によると、この説を信じている方は43%もいらっしゃるそうです。

テレビや有名企業がこれだけ断言しているのですから、「目から日焼けする」という説は本当なのでしょうか?皮膚科専門医が検証してみます。

この記事を書いた医師

江畑 慧

Satoshi Ebata

現在の研究は「マウス」が対象

まず、「目から日焼けする」という説には、根拠となっている論文があります。論文に基づかないエセ医学もあるわけですが、この説は違います。それらの論文は大阪大学のチームから発表されたものです (参考文献 4,5) 。これらの研究では、「マウスの目に光を当てたら、皮膚でメラノサイトが増えて肌が黒くなったよ」とのデータが出ています。

確かにそう聞くと、「やっぱり目への紫外線の刺激が、全身の肌に影響するんだな」と納得してしまいそうですね。ただ、一概にはそうは言えないのです。

大きな問題として、「動物実験だけでは人でも同じだとは言えないよ。」という点が挙げられます。

そもそも、マウスは夜行性です (参考文献 6) 。本来、紫外線の多い昼間にはあまり活動しない生き物です。先程の研究では夜行性のマウスに麻酔をかけて、強引に目へと紫外線を当てています。かなり特殊な条件であり、昼間に活動し慣れていて、目から紫外線を受けることが多い人間でも同じ結果になるかはわかりません。

加えて、シミのもとになるメラノサイトが存在する場所が、人とマウスでは異なります (参考文献 7) 。私達人間の肌が黒くなるときに起こる現象と、マウスの肌が黒くなるときの現象には違いがあるのですね。

このようにマウスと人では多数の相違点があるので、最近の科学界では「マウスを使った実験には欠陥が多い。ちょっとした条件の違いでも、全く異なる結果が出てしまう。マウスで成功した実験でも、人で同様にうまくいくケースは殆ど無い。」と指摘する声も挙がっています (参考文献 8) 。 

人ではまだ根拠がない!

以上をまとめると、「目から入る紫外線で肌が黒くなるか?」という話は、

マウス⇒もしかしたら、その通りかもしれない。

⇒検討されていないので、現時点では何とも言いようがない

というのが現状でしょう (参考文献 9) 。

なので、「サングラスをかければ、全身のシミやシワの対策になる」という話には、適切と言えるだけの根拠は存在しません。一般に「肌の紫外線対策」として推奨されるのは、「塗る日焼け止めをたっぷり使用すること」「紫外線防御指数 (UPF) が高い衣服を着ること」であり、サングラスではないのです (参考文献 10) 。

「サングラスをかけたら肌にも良い」と思い込んで、本来有効な手段である、日焼け止めや衣服による皮膚の保護をおろそかにしないようにご注意くださいね。

サングラスは「目」を守る

なお、「サングラスが肌の日焼けを守る」という情報が不正確であるとはいえ、サングラスを使用すること自体が悪いわけではありませんので、そこは混同なさらないようにご注意ください。

例えば、アメリカ眼科学会は紫外線対策にサングラスを推奨しています (参考文献 11) 。特に、「 100% 紫外線カット」と書かれていて「サイズが大きめ」の製品が良いとのことです。ただし、それは「肌」ではなく「目」を守るためですね。サングラスは肌ではなく、目の角膜や水晶体などを紫外線から守って白内障などのリスクを下げる目的で用いるのが良いでしょう。

正しい情報を見極めよう

今回の例に限りませんが、動物実験のデータだけを強調する医療情報には注意が必要です。「動物実験のデータをそのままヒトに当てはめて健康法を考えてはダメだよ」と覚えておきましょう!

今回の記事が、皆様が適切な医療情報を見極める参考になれば幸いです。

COI

本記事について、開示すべきCOIはありません。

参考文献