なぜ近視になるのか?「子どもの近視リスクを高める原因と対策」を眼科医が解説

カテゴリ:眼科

公開日:2022/01/23/

最終更新日:2022/03/25

まとめ

  • 近視リスクを高めるのは「親からの遺伝」「アジア人であること」「不適切な目の酷使」
  • 目から 30cm 未満のものを見たり、30分以上手元の作業を続けたりは近視のリスクに!
  • 近視予防に重要な「20-20-20ルール」とは?

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ドクターK

Doctor K

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眼科医。皆さんの目を守るため、自身のメディア (オンライン眼科) および Twitter で、科学的根拠に基づいた情報発信中。

近視が気になっているあなたへ

この記事を読んでくださっているということは「自分が近視で悩んでいて、子どもに同じ苦労はさせたくない」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。あるいは「目に近づけてゲームをすると目が悪くなる」「親が近視だと子どもも近視になる」と耳にしたことがあり、それが医学的に正しいのか気になる方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は近視を招く、あるいは悪化させる可能性を高める要素 (危険因子:リスクファクター) について、現時点で明らかな内容を最新データに基づき解説します。この記事を読めば、近視の危険因子についての正しい知識が身に付きます。

子どもの近視は多い!!

そもそも「近視」とはどんな状態?

近視の危険因子を説明する前に、まず近視とはどういうものか、そして近視の方の割合についてみていきましょう。

出典: https://www.gankaikai.or.jp/health/57/index.html

近視は、眼の形が前後方向に長くなった結果、スクリーンである網膜ではなくその手前に眼のピントが近くに合ってしまう状態です。そのため、眼鏡やコンタクトレンズなどによる矯正なしでは、遠くを見ることが難しくなります。

学年が上がるにつれて近視が増える。

2017年に東京の学校に通う1478人のお子さんたちを対象とした調査では、小学生で 76.5% 、中学生で 94.9% が近視だと報告されました (参考文献 1) 。

6歳では近視率は 63.1% ですが、12歳では 94.6% が近視です!近視が年齢とともに増えていることがわかります。

今後さらに近視が増える可能性

近視の多い日本ですが、実は世界的にも近視人口が増えていることが分かっています。もしもこのまま近視が増え続けると、2050年には近視人口が全世界人口の半数に達する計算になります (参考文献 2)。今後も近視がどんどん増えてしまわないかと、私たち眼科医は懸念しています。

近視の何がいけないの?

でも、近視だと一体どんな問題があるのでしょうか?目が悪くなるのはそんなに良くないことでしょうか?現代では眼鏡やコンタクトも低価格で手に入りますし、近視って病気というほどのものではなくない?と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

近視が招くリスクとは?

先ほども説明した通り、近視は遠くにピントが合わなくなっただけの状態です。ですから、近視であること自体はそこまで大きな問題ではないように感じます。しかし、近視が進行すると、さまざまな目の病気を引き起こし、さらに視力が低下する恐れもあるのです。

近視がリスクを高める、怖い目の病気には何があるでしょうか。皆さんも一度は聞いたことがありそうな病気として、緑内障網膜剥離があげられます。これらは近視、特に強度近視 (近視の程度が強い) の方で発症するリスクが高いので注意が必要です (参考文献 3) 。

近視が招く緑内障のリスク

たとえば、近視の方は、そうでない方に比べると、かなり緑内障にかかりやすいと報告されています (参考文献 4) 。さらに、緑内障以上に近視との関連が強いのが網膜剥離という病気です。網膜剥離を合併するリスクは、近視の人では桁違いに上昇すると考えられています (参考文献 5) 。

緑内障は常に日本人が失明する原因の上位に入っていますし、網膜剥離も手術が遅れると視力が元に戻らないことがあります。近視で少し見えづらくなるだけなら大丈夫かな……と思っていると、他の病気につながって取り返しがつかない事態を招くこともありえるのですね。だからこそ我々眼科医も「近視につながることはなるべく避けてください」と日々患者さんに口を酸っぱくしてお伝えしているわけです。

避けられる近視の危険因子は?

近視が怖い病気につながるのであれば、やはり近視を招く危険因子は避けたいものです。危険因子についてはいくつか報告がありますが、近視になったり、悪化したりするリスクを高めると報告されている要素としては以下のものがあります (参考文献 6, 7) 。

  • 遺伝:ご両親に近視の方がいると、お子さんも近視になる率が高い
  • 民族性:日本人を含めたアジア人では近視の率が高い
  • 目の酷使:「目から 30 cm 未満の物を見て作業する」「休憩無しで30分以上本を読む」

これら危険因子のうち遺伝や民族は生まれつき決まるものです。本人や親御さんの努力で避けることはできませんね。つまり、自分で気をつけることができるとしたら、

  • 本を目に近づけて読んではダメだよ!
  • ゲームをする時にはマメに休憩を入れて目を休ませようね。

などのポイントが重要になります。そう心がけることで、近視になりにくく、またもし近視になっても重症になりにくくなるはずです。特に、横になって本やスマホなどを見る時は普通に座って作業する場合よりも目までの距離が近くなりがちですから、お気をつけくださいね。

近視を防ぐためにできること:「20-20-20ルール」とは?

以上を踏まえて、アメリカ眼科学会では「20-20-20ルール」というルールを推奨しています (参考文献 8)。この20-20-20ルールとは、

「20分間継続して近くを見続けたら(読書など)、20フィート (約 6 m) 離れたものを、20秒間見る」

というもの。読書に限らず、スマホやゲームなど近くを見る作業をするときには、ぜひ思い出していただきたいルールです。このような明確な基準があると、お子さんに教えてあげやすいですね。ぜひ今日から、「20-20-20ルール」を皆さんの生活に取り入れましょう!

おわりに: わかりやすいルールで近視予防を!

近視はそれ自体では大きな問題がないようにも感じますが、緑内障や網膜剥離など怖い病気にもつながります。近視は徐々に進行するので、日々の生活の中で予防していくことが重要です。読書やゲームなどを目から近い距離で行ったり、長時間続けたりしないように気をつけましょう。そして、お子さんが読書やゲームを楽しむ年齢になったら、20-20-20ルールを導入して可能な範囲で近視を予防してみてはいかがでしょうか。

COI

本記事に関して、開示すべき COI はありません。