まとめ
- 糖尿病の合併症には、神経障害、網膜症、腎症があります。
- いずれの合併症も、血糖値を早期に管理することが重要です。
- 合併症の初期症状には気づきにくい場合も多いため、予防のために定期的な検査を心がけましょう。
多くの方が糖尿病という言葉を一度は聞いたことがあると思いますが、糖尿病とはどんな病気で、糖尿病になったらなぜ治療が必要なのか、ご存知でしょうか?
ズバリ糖尿病とは、血糖値が高くなる病気です。
そして糖尿病の治療の目標は、血糖値が高くなることを改善し、血糖値が高いことによって起きる様々な合併症を防ぐことにあります (参考文献 1) 。
今回の記事では、糖尿病の三大合併症とその予防について、糖尿病専門医が解説します。
大坂 貴史
Takafumi Osaka
医師 / 糖尿病専門医 / 医学博士
糖尿病の三大合併症「し・め・じ」で覚えましょう!
糖尿病の合併症と呼ばれるものは様々ありますが、代表的なものは三大合併症と呼ばれる①「神経障害(しんけいしょうがい)」②「網膜症(もうまくしょう)」③「腎症(じんしょう)」です。
この三つは①「し」んけい、②「め」だま、③「じ」んぞうの頭文字を取って、「しめじ」と覚えます。
今回は、この「しめじ」について主に解説していきます。
①神経障害
一つ目は糖尿病性神経障害です。
神経障害の症状は様々ですが、代表的なものとしては足の裏から徐々に上がってくるしびれ感や感覚の低下です (参考文献 2) 。
同様の症状が手のひらから上がってくることもあります。じんじんとしたしびれるような痛みとして気づくこともありますが、感覚がなくなることには気づきにくいため、知らないうちに合併症が進んでしまっていることもあります。
その場合、気づかないうちに怪我をしてしまい、最終的に足を切らないといけなくなる場合もあります (参考文献 3) 。
他にも自律神経障害といって、立ち眩み (たちくらみ) や便秘、下痢、勃起障害などがあります。
いずれの場合も、傷ついた神経組織を治すのは難しいため、血糖値の改善を図ることで進行を遅らせたり、症状が出る前に血糖値を管理して予防したりすることが重要です。
ただ、痛みを伴う神経障害の場合は、薬剤やその他の方法で痛みを軽くできる可能性がありますので、専門医に相談しましょう (参考文献 3) 。
②網膜症
二つ目は糖尿病性網膜症です。
網膜とは、目の奥にある光を映像化する部分のことで、網膜にある血管に障害が起きます。
網膜はプロジェクターでいうところのスクリーンに該当しますので、ここが悪くなると次第に目が見えなくなります。現在の日本では、失明の原因の 約10% がこの糖尿病性網膜症によるものといわれています (参考文献 4) 。
糖尿病性網膜症に関して重要なことは、定期的な眼科受診です (参考文献 3) 。
糖尿病を患っている人は内科に通院している場合が多いですが、内科では網膜症の検査が行えません。ですから、網膜症の検査を行うためには、内科に加えて眼科にも通院する必要があります。
糖尿病と診断されている人は、必ず眼科にも通院し、定期検診を行いましょう。
網膜症が悪化した場合にはレーザーなどの治療方法もあります (参考文献 3) が、そのまま放置しておくのは失明につながるため危険です。
特に糖尿病性網膜症は、初期だけでなく進行してもほとんど無症状なことが多く、よく見えているから受診する必要はない、ということはありません (参考文献 5) 。
予防方法としては、血糖値の管理 (参考文献 5) が挙げられます。
しかし、あくまでも血糖値を良くすることで病気が進行しにくくなるということですので、一旦悪くなってしまった状態からの改善は難しいです。目の病気が進む前に、血糖値を良い状態にしましょう。
③腎症
三つ目は糖尿病性腎症です。
腎臓が全く機能しなくなってしまった場合、人工透析 (機械で腎臓の代わりをしてもらう処置) が必要になるのですが、その人工透析の原因として最も多いのが糖尿病性腎症です (参考文献 6) 。
糖尿病性腎症は、特に早期はほとんど自覚症状がない病気で、早期発見には尿検査で尿中アルブミンという項目の測定が有用とされています (参考文献 7) 。
予防には、血糖値に加えて血圧の管理も重要です (参考文献 8) ので、血圧にも注意をしましょう。
合併症の予防のために、定期的な検査を心がけましょう!
いかがだったでしょうか。
重要なことは、定期的な検査と悪くなる前の血糖値や血圧の管理です。
いずれの合併症も初期段階ではほとんど無症状ですので、気がついたら合併症が進行していた、合併症が出て初めて糖尿病と分かった、ということも少なくありません。
そうならないためにも、定期的な検査がとても重要です。
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