まとめ
- あせもは、大量の汗をかいてエクリン汗腺が詰まることで生じる皮膚トラブルで、特に夏生まれの赤ちゃんに多いです。
- 涼しい環境で過ごす、通気性の良い衣服を着るなどして、過剰な汗を抑えましょう!
- 症状が重いときはステロイドの塗り薬を使用することも可能です。市販薬では『リンデロンVs軟膏®』『リビメックスコーワ軟膏®』等が使えます。
『あせも』という病気については、ご存知の方も多いかと思います。夏は高温多湿な気候になる日本では珍しくない病気ですよね。今回の記事では、身近な肌トラブルである、あせもについて皮膚科専門医が解説します!
あせもはどうしてできるの?
そもそも、あせもとはなんなのでしょうか。人間の体には、汗を出す『汗腺』という組織があります。このうち体温調整にかかわるのが、全身に約300万個が分布する『エクリン汗腺』です (参考文献 1) 。
高温多湿な環境で過ごしたり、激しく運動したりすると、体温を下げるためにエクリン汗腺で大量の汗が作られます。大量にかいた汗がエクリン汗腺をつまらせると、出口を失った汗が皮膚の中にたまってしまい、皮膚のブツブツやかゆみなどの症状が起こります (参考文献 2,3) 。これがあせもの発生メカニズムです。
あせもが起きやすいのは?
「あせもは子供の病気」という印象をお持ちの方はいらっしゃいませんか?実際には老若男女に幅広く生じます。大人でも、高温多湿な環境で過ごせば、高確率であせもを発症してしまいます (参考文献 2) 。
ただ、特にあせもを生じやすいのは、エクリン汗腺が未熟で詰まりやすい赤ちゃんです (参考文献 3) 。特に、生後1-3週間のお子さんではリスクが高いとされます。
例えば、2012年から2015年にかけて東京大学が1ヶ月検診時のお母さん達に依頼したアンケート調査では、生後1ヶ月までの間に 16.9% の赤ちゃんがあせもにかかったと報告されました。特に、春や夏に生まれた赤ちゃんは、冬生まれの赤ちゃんよりも高確率であせもを発症しました (参考文献 4) 。 12-2月生まれの赤ちゃんのあせも発症率が 2.0% だったのに対して、6-8月生まれの赤ちゃんのあせも発症率は何と 28.8% に達していました。
つまり、「エクリン汗腺が未熟な赤ちゃん」と「高温多湿で汗をかきやすい日本の夏」という 2 つの要素が重なると、とても高い確率であせもを生じてしまうのです。暑い時期にお子さんが生まれた場合には、親御さんがあせも対策に配慮してあげる必要性が高いようですね。
効果的なあせも対策にはどのようなものがある?
ここまで、「あせもは大量の汗をかくことで生じる」と説明してきました。
それを踏まえると、あせも対策としては、もちろん過剰な汗を抑えることが大事です (参考文献 2,3,5) 。
その方法には以下のようなものが挙げられます。
- 涼しい環境で過ごす。
- 通気性の良い衣服 (綿など) を着用する。
- 着る服の量を少なめにして、服を緩めに着る。
- 冷たいお風呂に入れてあげる。
- 皮膚をふさいでしまう包帯などの着用は避ける。
- 発熱してひどく汗をかいているようであれば、解熱剤の使用を検討する。
お困りの際にはこれらのことに気をつけながら過ごしてみましょう。
また、かゆみや赤みが強いなど症状が重いときには、ステロイドの塗り薬を1,2週間程度、1日2回塗ることがあります (参考文献 3) 。
市販薬ですと『リンデロンVs軟膏®』や『リビメックスコーワ軟膏®』などがあせもに適応があるので、まずはこれらの治療薬を使用してみるのもよいでしょう (参考文献 6,7) 。
これらの対策だけでも、ほとんどのあせもは治ります (参考文献 2) 。ただ、まれではありますが、症状が悪化して『無汗症』という汗をかくことができなくなる病気に進展していまい、これが熱中症の原因になることもあります。また、あせもかと思ったら実は勘違いで、本当はウイルス感染症やニキビなど別の病気だったというケースも存在します。
もし治りが悪いようでしたら、お気軽に病院を受診くださいね。
あせもをよく知り、効果的な対策を!
以上、あせもの原因や対策などについて解説しました。
高温多湿の日本ではあせもを発症するリスクが高いので、適切な知識に基づく対策で、ご自身やご家族の健やかな肌を守りましょう!症状の強い場合にはぜひ医療機関にご相談してみてください。
COI
本記事において、開示すべきCOIはありません。