首イボにヨクイニンやハトムギは効くの?

まとめ

  • 首の加齢イボにヨクイニンやハトムギが効くかのような広告をよく見かけます。
  • 実際には、飲み薬で一般的な首イボを治療することはできません。
  • 首イボでお悩みの方は、皮膚科でご相談ください。

皮膚科では、特に30代以降の方から「首イボ」の相談を受けることが多くあります。首にイボがあると老けて見える…と感じてお悩みの方がいらっしゃるようですね。そんな時に「首イボにヨクイニンやハトムギが効くと聞いたのですが、どうでしょうか?」と尋ねられるケースも少なくありません。飲み薬だけでイボがポロポロ取れるなら手軽で嬉しいですが、はたして効果はあるのでしょうか?皮膚科専門医が解説します。

この記事を書いた医師の名前

江畑 慧

Satoshi Ebata

首イボにヨクイニンやハトムギは効くのか?

結論から言うと、首の加齢イボにはヨクイニンやハトムギは効きません。一方で、「イボにヨクイニンが処方されることがある」のも確かです。

実はイボには、

  1. ヨクイニンの効果が期待できるイボ
  2. ヨクイニンの効果が期待できないイボ

の両方があり、首にできる加齢イボは、後者の②にあたるのです。

ヨクイニンやハトムギの効果が期待できるのはどんなイボ?

まず、イボの種類を確認しましょう。日本皮膚科学会の『尋常性疣贅診療ガイドライン』によると、イボの種類は以下のように分けられます (参考文献 1) 。

  • ウイルス性のイボ:尋常性疣贅・扁平疣贅・尖圭コンジローマなど
  • 脂漏性角化症:高齢者に生じる褐色のイボ
  • 軟性線維腫:首や脇などに摩擦や紫外線/加齢の影響で生じる、ひょろ長いイボ

皆さんから相談を受ける首イボの多くは「軟性線維腫」です。この他、脂漏性角化症が混ざっていることもあります。

次に、ヨクイニンが使用されるイボの種類を見てみましょう。ヨクイニンの添付文書を確認してみると、ヨクイニンが使用されるのは尋常性疣贅と扁平疣贅の2種類だけになっています (参考文献 2) 。

つまり、ハトムギ由来のヨクイニンの効果が期待されているのは、ウイルス性のイボの中でも一部のタイプだけなのです。

一般的な首イボはウイルスとは無関係ですから、ヨクイニンやハトムギは効かないといえます。

ヨクイニンに対する誤解が広まってしまった背景

ヨクイニンに対して間違った印象が広まってしまった背景には、「ヨクイニンやハトムギで首の加齢イボが取れる」という印象を与える広告が目立つことがあります。たとえば、ヨクイニンの広告写真に「ヨクイニンが効かないはずの加齢タイプのイボ」の写真が掲載されていたケースもあります。

こうした広告は皮膚科医の間で問題視されています。すでに日本臨床皮膚科医会と日本皮膚科学会が共同で、広告を出した会社へ抗議したことがあります (参考文献 3) 。

「効果が期待できない症状の写真を使うのは問題だ」と繰り返し伝えたところ、抗議を受けた会社は最終的に広告内容の修正に応じたとのことです。

しかし、現在も「首イボにはヨクイニンやハトムギが効くんですよね?」という質問は少なくありません。一度広まった誤解をとくのはなかなか難しいと感じています。ヨクイニンやハトムギを良かれと思って飲んでいる方には、ぜひこの記事で正しい情報・知識を得ていただきたいと思います。

首イボの主な治療法

一般的な首イボは、基本的に放置してもかまいません。がんや感染症ではありませんから、内臓に転移したり、誰かにうつしたりという実害はないわけです。しかし、見た目が気になるという方は、首イボを切除することも可能です。ハサミで切ったり、液体窒素で凍らせたり、レーザーで焼いたりと、複数の治療法があります (参考文献 4,5) 。

治療法には効果や費用面などに関してそれぞれ一長一短ありますので、詳細はお近くの皮膚科の先生に聞いてみると良いでしょう。

さいごに

以上、首イボにヨクイニンやハトムギは効くのか、について解説しました。

首イボでお困りの方は、市販のヨクイニンやハトムギに頼るのではなく、皮膚科を受診しお気軽にご相談くださいね。

COI

本記事について、開示すべきCOIはありません。

参考文献