まとめ
- 『オルソケラトロジー』とは特殊なコンタクトレンズを寝ている間に装用して、角膜の形を変えることで視力をアップさせて、日中は裸眼で過ごすことを目的とした治療法
- オルソケラトロジーは特にスポーツをする人におすすめですが、条件によっては使えない場合があるので注意!
(条件は①年齢②特定の病気の有無③近視・乱視の度数、安定性) - オルソケラトロジーを正しく使うためにはよく洗い、消毒をし、定期交換することが重要
一時的に視力が回復する驚きの方法とは!?
「近視で視力が落ちたらもう二度と視力は戻らない、戻したいならレーシック手術を受けるしかない」
「近視や乱視になったら一生眼鏡かコンタクトレンズをするしかない」
なんて、皆さん思い込んでいませんか?
実は、ある一定の条件を満たせば、手術なしで視力を一時的に回復させられる可能性があります!
オルソケラトロジーとは
「オルソ (ortho-) 」は「正しい、直交の」を意味する言葉で「ケラト (-kerato-) 」は「角膜」を意味する言葉です。『オルソケラトロジー』はこれらを組み合わせた言葉で「角膜の形を矯正することで視力を回復させる」という意味合いを持ちます。
より詳しく、正確に説明すると、「特殊なハードコンタクトレンズを寝ている間に装着し、角膜の形を変えることで、日中裸眼で過ごすことを目的とした視力矯正方法」のことです (参考文献 1 ) 。
オルソケラトロジーの考え方は1962年にJessenらが提唱しました。
1962年以降、改良を重ね、2002年に現在の形のオルソケラトロジーがParagon社などから販売されるようになりました (参考文献 2 ) 。
日本でも2009年から厚生労働省に使用が承認されたため、近くの眼科でオルソケラトロジーを扱っている病院を見かけるようになったのではないでしょうか (参考文献 3 ) 。
オルソケラトロジーは誰でも使えるの?
オルソケラトロジーは眼鏡やコンタクトレンズを装用しなくても、また、レーシックなどの手術なしでも、日中裸眼で過ごせるようになりうる方法です。
近畿大学での臨床治験の結果によると、オルソケラトロジー装用後、多くの方は2週間以内に (早い人では翌日から) 視力が回復するとされています (参考文献 4 ) 。
しかし、残念ながら誰でも使えるわけではありません。
オルソケラトロジーガイドライン (第 2 版) に細かく適応条件の記載がありますが、重要なポイントをまとめると 3 つのポイントがあります。
1.原則20歳以上が対象
(未成年者の場合は長期間使う可能性があるため、親権者の方の同意が必要です。)
2.度数が安定しており、ある一定以上の度数を超えない近視あるいは乱視である
(近視の度数や乱視の度数やその種類によってはオルソケラトロジーができない場合もあります。)
3.目の病気がなく健康な目である
その他にも細かい条件はありますが、この 3 つが特に重要です (参考文献 1 ) 。
これらの条件に合う人でも効果に個人差は有り、“ 100% 視力が上がる!”というわけではないことにはご注意ください (参考文献 4 ) 。
オルソケラトロジーはどんな人に向いているの?
「日中に眼鏡やコンタクトレンズを装用しない方が良い、あるいは装用したくない人」はオルソケラトロジーを選択肢に入れると良いでしょう。
例えば、野球やラグビー、水泳など、砂や水が多い環境下で運動したり、人と激しい接触があったりするスポーツの場合、眼鏡やコンタクトレンズが破損すると目をケガする恐れがあります。このように、眼鏡やコンタクトレンズでは危険が伴う時に、日中は裸眼で過ごせるため安全だと言えます。
その他にも、接客業で仕事中に眼鏡をしたくない、日中にコンタクトレンズを使うと乾燥するのが困る人などが理由で使うことも考えられます。
一方で、定期的な通院が難しい方、妊婦さん、糖尿病などの方はオルソケラトロジーはやや行いにくいです (参考文献 1 ) 。(詳細は眼科医にご相談ください。)
また、車やバイクを日常的に運転される方はオルソケラトロジーを使い始めてから視力が安定するまで、運転を控えた方が望ましいです。
眼鏡・コンタクトレンズ・レーシック手術・オルソケラトロジー・眼内コンタクトレンズ (ICL) の特徴をまとめると次のようになります。
レーシック手術、眼内コンタクトレンズ (ICL) については以下の記事で詳しく解説しています。
オルソケラトロジーで注意すべきことは?
オルソケラトロジーはハードコンタクトレンズを寝ている間に付ける方法です。
そのため、通常のコンタクトレンズによる合併症を起こす可能性があります。
【例】ドライアイ、アレルギー性結膜疾患、角膜炎などの感染症
特に、オルソケラトロジーでは緑膿菌やアカントアメーバによる感染性角膜炎が多いという報告があります (参考文献 1 ) 。緑膿菌やアカントアメーバによる角膜炎は非常に治療が難しく、最悪の場合には失明してしまう恐れもあります。
オルソケラトロジーの管理のポイント
オルソケラトロジーを使用する時に、このような怖い合併症を避けるため「管理のポイント」を一緒に勉強しましょう👀
オルソケラトロジーのガイドラインでは
①レンズ自体を界面活性剤でこすり洗いする
②ヨードアレルギーに注意したうえでポピドンヨード剤で消毒する
③レンズケースは中和剤を除去するために、水道水で洗浄・すすぎをし、その後乾燥させ定期的に交換する
ことを推奨しています。
オルソケラトロジー処方後は合併症が起こっていないかどうか、過剰に視力が矯正されていないか、などを確認するために3カ月に1回は眼科を受診することが推奨されています (参考文献 1 ) 。
適切に管理することで、合併症のリスクを下げ、より安全にオルソケラトロジーを使用できます❕
オルソケラトロジーはどのくらいお金がかかるの?
オルソケラトロジーは保険適用外・自由診療のため、クリニックによって治療費が異なります。
いくつかクリニックを調べてみると、治療費は一般的に10万円~30万円程度 (両眼・診察料込)かかります。
医療費控除の対象ではありますが、決して安くない額ですね。
おわりに
オルソケラトロジーをやってみたい!と思っており、使用できる、と医師に判断された方はオルソケラトロジーを始められます。
その際には、使用上の注意点をよく理解し、適切な管理をすることを必ず守りましょう!
「オルソケラトロジー、使ってみたいなあ」と思った方は近くにある眼科を受診&相談してみてくださいね。
なお、近視を予防する方法についてはこちらの記事で解説しているので併せてご確認ください。
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この記事に本記事について、開示すべき COI はありません。