まとめ
- まつ毛美容液ではまつ毛は伸びない……。
- まつ毛美容液による健康被害が急増中。
- まつ毛を本当に伸ばしたければ、医薬品の『グラッシュビスタ』が効果的かも。
最近、 Instagram などでまつ毛美容液の広告をよく見ませんか？
「まつ毛がバッサバサに！」、「自分史上最長まつ毛！」、「3日目ぐらいから伸びたのを実感！」、「まつ毛が1週間でメガネに当たるように！」、「まばたきの度に空気の抵抗を感じる！」などの宣伝文句が並んでいるようです。
これが本当ならば、まつ毛を伸ばしたい方には夢のような話ですよね。
まつ毛美容液には本当にまつ毛を伸ばす効果があるのでしょうか？また、デメリットは無いのでしょうか？
皮膚科専門医が検証してみました。
本当にまつ毛美容液でまつ毛が伸びるの？
結論から述べると、まつ毛美容液でまつ毛が伸びることはありません。
「え、じゃあいつも見かける広告は嘘なの？」と気付かれた方は鋭いですね。その通りで、「まつ毛美容液でまつ毛が伸びる」と勘違いさせる広告は悪質なものといえます。
すでに日本広告審査機構や独立行政法人国民生活センターが警告を発しているという状況です (参考文献1,2) 。
気をつけたいのは、まつ毛美容液はあくまで「化粧品」であり、厚生労働省の承認を受けた「医薬部外品」や「医薬品」ではないということです。
残念ながら、まつ毛美容液に「育毛」や「発毛を促す」などの効果は期待できません。
また、厚生労働省による承認を受けていない化粧品を宣伝する際に宣伝に使って良い言葉には制限があります。まつげ美容液に関して言えば、「まつ毛にはり/こし/つやを与えます」程度です (参考文献2) 。
つまり、「育毛」や「発毛を促す」などと広告に書いてはいけないのです。
これ以上の効果を期待させるような広告に騙されないよう、気をつけないといけませんね。
まつ毛美容液による健康被害も…！
さらに、効かないだけならばまだしも、残念なことにまつ毛美容液による健康被害が急増しています (参考文献2)。
2019年に国民生活センターが報告したデータでは、まつ毛美容液を使用して目の周りが腫れるなどの被害を受けたという相談が、2015年度以降で381件も寄せられています。
しかも、2015年度 8件、2016年度 18件、2017年度 70件、2018年度 281件、とどんどん増えているのです (参考文献2) 。
2015年から2018年にかけて報告された健康被害のうち、約8割は赤み、かゆみ、痛み、腫れなどの皮膚障害でした。また、0.8% とわずかではありますが感覚機能の低下が報告されています。さらに、眼の表面にある角膜と呼ばれる膜がただれる「角膜潰瘍」と診断され、手術が必要になったというおそろしいケースもありました。
国民生活センターHPでは「まつ毛美容液を使用すると、使用者の体質や、使用時期によっては、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等が生じることがあります。特に、植物由来の成分やエタノールなどのアルコール類は、使用部位による刺激・アレルギー反応を起こし易いと考えられます。」と解説されています (参考文献2)。
まつ毛美容液をご使用になる場合には、このようなリスクがあることを忘れないでくださいね！
まつ毛を伸ばすことはできないの？
では「まつ毛を伸ばしたい！」というのは叶わない望みなのでしょうか？
実は、本当に叶えられる製品もあります。
それは「まつ毛美容液」ではなく、厚生労働省が承認している医薬品の「グラッシュビスタ」です (参考文献3,4) 。
まつ毛が薄い日本人を対象とした臨床試験で、クラッシュビスタを1日1回塗ったらまつ毛の長さや見た目が改善したと報告されています。
まつ毛美容液でまつ毛が伸びると勘違いしていた方は、化粧品の代わりに、医薬品であるグラッシュビスタの使用を検討してもよいかもしれません。
ただし、グラッシュビスタは市販されていないので、使用したい方は取り扱いのある病院やクリニックで相談する必要があります。また、保険の適用はないため、取り扱い医療機関ごとに値段は異なります。
大まかな目安として、薬自体は月に5000円から1万円程度で販売している病院が多いようです。費用やリスクなど、より詳細については病院でよく確認して下さい。
以上、まつ毛美容液についてまとめました。
まつ毛美容液はまつ毛を伸ばせるわけではありませんし、いろいろな健康トラブルの報告もあります。
まつ毛を伸ばす医薬品など他の選択肢もありますので、よく考えてから使用するようにしてくださいね。
なお、まつ毛エクステについてはこちらの記事で解説しています。こちらも併せてご覧ください。
3: Pmda 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(2021). グラッシュビスタ外用液剤0.03%5mL. (閲覧日 2022-04-12)
COI
本記事に関して、開示すべき COI はありません。
