まとめ
- じんましんは原因を特定できないことが多いです。
- アレルギーの血液検査は基本的に必要なく、むしろ有害なこともあります。
- 症状が出る前に食べた物などを記録すると原因特定のヒントになるかも!
「お風呂に入った後にいつもできる、あれ?これって虫刺され……?」
「明日のテスト、緊張するなあ。なんだか腕がちくちくしてきた、え!赤くなってる?」
「この食べ物食べると、必ずじんましん出るけど食べちゃうんだよねえ」
こんな経験、皆さまお持ちではないですか?
じんましんは病院できちんと検査してもらうべきなんでしょうか?そんなお悩みを皮膚科医あび先生が解説します!
じんましんってなに?
じんましんとは、皮膚が突然ボコボコ盛り上がってかゆくなる疾患のことです。自分の皮膚にいきなりそんなものが出てきたらびっくりしますよね。見た目は派手ですが、1個1個の皮疹 (皮膚に生じる病変のこと) は数時間〜1日程度で跡形もなく自然に消失することが多いです (参考文献1) 。
じんましんの原因はアレルギーの血液検査で分かる?
じんましんが出ると、かゆみやちくちくとした痛みを伴うことが多く、「早く治したい!もう出ないようにしたい」と思いますよね。
じんましんの原因は様々ですが、「アレルギーかもしれない」と病院を受診される患者さんが多いように感じます。実際に「原因を知りたいのでアレルギーの血液検査をしてください」とお願いされることもよくあります。
たしかに「何か原因があるはず!」と思う気持ちはよくわかります。しかし、実際にアレルギーの血液検査が必要な方はわずかです。皮膚科学会のじんましんガイドラインでも、じんましんが出た患者さん全員には検査を行うべきでないとされています (参考文献1) 。
なぜでしょうか?
それはじんましんの70%以上がこれといった原因のないものだからです (参考文献2) 。
アレルギーの血液検査はした方がいい?
アレルギーの血液検査は簡単に行うことができます。様々なアレルゲン (アレルギーを引き起こす可能性のある物質、例えば花粉・犬のフケなど) を、一度に調べることもできます。
ただし、検査結果だけでアレルギーかどうかを確定することはできません。あるアレルゲンに対するアレルギーがあっても検査は陰性(-)だったり、逆にアレルギーはないのに検査だけ陽性(+)になることもよくあります (参考文献3) 。
例えば、本当はアレルギーがない食べ物について「陽性(+)」という結果が出てしまったとします。そんな結果を見ると、「今まで普通に食べていたけど、この食べ物アレルギーだったんだ……!どうしよう、これからアレルギー症状が出てくるのかもしれない」と不安になってしまいませんか?
その食べ物を必要以上に避けることで、食事の楽しみが減ってしまったり、栄養が偏ってしまったりする可能性が考えられます。アレルギーの有無は採血だけで分かるものではないため、必ずしも正確ではない検査の結果に混乱するのはもったいないことです。
検査はとりあえずやっておいた方が良いとはならないことがわかるかと思います。簡単に行えるとはいえ、お金がかかる上に採血で痛い思いもします。
特に、お子さんにじんましんが出たら、心配になってアレルギーの血液検査をお願いしたくなるかもしれません。ですが、病院を受診する際にはこのことをぜひ頭の片隅においていただきたいです。
じんましんの原因はどうやって分かる?
原因が明らかであるじんましんは全体で20-30%程度と言われています。その中で頻度の高いものとしては、皮膚がこすれることや冷たい刺激などによる「物理性じんましん」や、食べ物・薬などによる「アレルギー性のじんましん」があります (参考文献2) 。
特定の原因がありそうな場合、またはアナフィラキシー (じんましんの他に息苦しさやを気持ち悪さなどもある状態) を起こしたことがある場合には、詳しく問診をした上で、必要な検査を検討します(参考文献1)。
また、じんましんを繰り返していて困っている方は、症状が出る前に
- 何を食べたか
(食事の写真を残すのもおすすめです!) - 皮膚に刺激があったか
(例:熱めのお風呂に入った、特定の植物に触った、服の素材がいつもと違った、など)
を時間と一緒に記録することで、診断に役立つ可能性があります。
例えばこのようにメモや日記に残しておくと、じんましんの原因を特定するヒントになると思います。特に、スマートフォンのメモアプリを使うと写真などで記録できるため、継続しやすい上に、病院で医師に見せるのを忘れにくいでしょう。
以上のように、じんましんの原因を特定しようとアレルギーの検査を行う必要は必ずしもありません。検査結果の解釈を間違えると、むしろ有害になる可能性もあります。「原因になっている可能性のあるもの」や「じんましんがいつ出たか」ということをメモしておくと、原因の特定や対策に役立つ可能性があります!
少しでも気になることがあれば、病院でお気軽にご相談くださいね。
COI
本記事について、開示すべきCOIはありません