まとめ
- アレルギー性結膜炎の目薬は症状に応じて、アレルギーを抑える目薬を使い分けます。
- アレルギー性結膜炎の症状が出始めたら、あるいは少し前から目薬を使うと症状が軽くなることがあります。
- スギ花粉によるアレルギー性結膜炎に対して、舌下免疫療法は有効とされていますが、副作用のため治療継続できないことがあります。
以前に自分でできるアレルギー性結膜炎対策として、セルフケアを5つ紹介しました。
ここに列挙したセルフケアを行っても症状が十分軽減しない人もいます。アレルギー性結膜炎に対する治療方法がいくつかあり、今回はそんなアレルギー性結膜炎で行われる治療について解説します。
アレルギー性結膜炎とその症状
はじめに、アレルギー性結膜炎について簡単におさらいしておきましょう。
目が真っ赤になったり、かゆくなったりする『結膜炎』については、以前にこちらの記事でご紹介しましたね。
結膜炎のうち、アレルギーによって生じるものを『アレルギー性結膜炎』と呼びます。その中でも、花粉によって引き起こされるものを『花粉性結膜炎』といい、その代表格と言えるのが『スギ花粉性結膜炎』ですね (参考文献 1) 。
2017年春に日本眼科学会の会員や家族を対象にWebアンケートを実施したところ、回答した3,004人のうち 37.4% の方がスギもしくはヒノキによる花粉性結膜炎にかかっていました (参考文献 2) 。
また、スギやヒノキだけでなく、季節により花粉の種類は異なり、春ではスギやヒノキ、初夏ではカモガヤやオオアワガエリ、秋ではブタクサやヨモギが代表的です (参考文献 1) 。
このように、花粉症結膜炎は季節によって症状が出てくるため、季節性アレルギー性結膜炎に分類されています。
日本耳鼻咽喉科学会広島県地方部会の資料をもとに作成
花粉症によるアレルギー性結膜炎の症状
前述した内容ともかぶりますが、花粉によるアレルギー性結膜炎の特徴は、何と言っても「目のかゆみ」です。目のトラブル時でもかゆみがないようなら、アレルギー性結膜炎以外の病気の方が考えやすいです。
花粉性結膜炎では、「目のかゆみ」以外にも、
- 目がひりひりする
- 目が赤い
- まぶたが赤く腫れる
- 水っぽい目やにが出る
などの症状が出ることがあり、両目同時に発生することが多いとされています (参考文献 3) 。
花粉症によるアレルギー性結膜炎治療のポイント
日本眼科アレルギー学会診療ガイドライン作成委員会がアレルギー性結膜疾患診療ガイドライン (第3版) を紹介していますので、それを元に解説します (参考文献 4) 。
さらに、日本ではスギ花粉症による舌下免疫療法も承認されており、それについても解説します。
目薬による治療
花粉症結膜炎の第一選択として、アレルギー反応を抑える目薬を用います。この目薬は目の充血やかゆみを抑える効果があります (参考文献 4) 。
このアレルギー反応を抑える目薬を用いても、症状が強い場合はステロイドなど炎症を抑える成分が入った目薬を追加して用います。
ただし、ステロイドの成分が入った目薬は、白内障や目の感染症などの原因となります。特に、お子さんに使う場合はさらに注意する必要があり、ステロイドを使う際には定期的に眼科を受診することが必要です。
花粉症には早めの治療が大切です
花粉症の治療は、花粉症の症状が出始めた段階、あるいは少し前から、アレルギー反応を抑える目薬を使い始めると、花粉が最も飛ぶ時期の症状が軽くなるとされています。
花粉が飛散する量は地域によって異なるため、日本気象協会のホームページで花粉飛散情報が地域ごとに発表されています。自分が住む地域ではいつから花粉が飛ぶのか知ることが可能ですので、その飛散時期に合わせて眼科を受診すると良いでしょう。
舌下免疫療法
舌下免疫療法 (Sublingual immunotherapy : SLIT )は、アレルギーの原因となる物質を舌の下に置くことで、徐々にアレルギー反応の起こり方を変化させます (参考文献 5、6) 。
この治療によってアレルギー性結膜炎の症状を軽くしたり、他の薬を使う量も減らすことが複数の研究で示されています。
日本では2017年に 5,000JAU (JAUはアレルギー単位) のSLIT錠が、5歳から64歳の患者を対象にスギの舌下免疫療法として使っても良いと認められました。スギ花粉症の症状が強い方にはSLIT錠も選択肢に入ることでしょう。
しかし、SLIT錠を使用したときに口のかゆみ、耳のかゆみなどの副作用を認めることがあります。また、くちびるや喉が腫れたりすることもあり、稀ではありますがアナフィラキシーの症状を認めることもあります。こういった副作用があるため、治療が継続できない場合もあることはよく理解しておきましょう。
また、スギ花粉が飛ばない時期に治療を開始する必要があったり、3年以上の治療が必要だったりします (参考文献 7) 。
「花粉症の時期になってから治療をしよう」「1回だけで治療が終わる」などと誤解のないように注意しましょう!
これらの治療をうまく組み合わせることで、アレルギー性結膜炎の症状を抑えられます。しかし、普段の生活でアレルギー性結膜炎の症状が出にくくする努力も重要です。
以前の記事で紹介したセルフケアも実践していただくと、症状が軽くなったり、使う薬の量が減ったりする場合もあります。
COI
本記事に関して、開示すべきCOIはありません。