まとめ
- 老眼では、加齢により目の『水晶体』が弾力を失って、手元にピントが合わなくなります。
- 老眼は40歳ごろに始まり、年齢を重ねると強くなります。
- 老眼治療は現時点では眼鏡による調整が一般的ですが、アメリカで老眼治療の目薬が承認され、注目を集めています。
「最近、近くの文字が見えづらくて目が疲れる」などと感じるようになった方はいらっしゃいますか?
どのようなメカニズムで老眼になるのか、老眼の治療法はあるのか、眼科医が解説します!
老眼とは
老眼では、目のピントが合いにくくなって視力が下がります。これは、加齢に伴って起こる正常な変化です (参考文献 1) 。
老眼になる仕組み
目の中には『水晶体』というものがあります。この水晶体とは、カメラのレンズに相当するもので、ピントの調節において重要な役割を果たします (参考文献 2) 。
私たちは通常、下の図のように水晶体の厚みを変化させることで、近くの物を見るときも、遠くの物を見るときも、網膜の上へ綺麗にピントを合わせられます。
しかし、加齢に伴って水晶体は弾力を失っていきます。つまり、水晶体が硬くなるイメージです。本来は、手元の本やスマホなどを見る際には水晶体が丸くなるのですが、弾力の乏しい水晶体では、その調整が上手くいきません。
その結果、近くの物を見る際にピントが合わなくなり、老眼になってしまうのです (参考文献 1) 。
老眼はいつから始まるの?
「老眼はお年寄りがなりそうなのに、どうして私が……」とショックを受けている方もいらっしゃるかもしれません。
老眼は通常、40歳以降に始まります。意外と若めの年代から始まることもあるのですね。特に、「読書する際の距離 (30 ㎝ ほど) にある物へピントを合わせられない」という症状を自覚します。
こうした症状は徐々に進行して、65歳になるとピント調整の力は完全に失われるとされています (参考文献 1) 。
老眼の治療方法
老眼は「もう歳だから仕方ない」と諦めていた方もいるでしょう。しかし、さまざまな種類の眼鏡が登場し、さらにアメリカで新たな目薬の使用が認められました。
治療法① メガネ
老眼の治療には、近くの物のみにピントが合う『老眼鏡』や、近くにも遠くにもピントを合わせることが可能な『遠近両用メガネ』などを着用します (参考文献 1) 。
ご自身に合った適切なメガネを使うためには、眼科医から診察を受け、処方箋をもらった上で眼鏡を買うことをおすすめします。
治療法② 目薬
さらに最近の注目トピックとして、2021年11月にアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration; FDA) が、老眼治療の点眼薬として『1.25% ピロカルピン塩酸塩点眼液』を承認しました (参考文献 3) 。
目薬の効果
ピロカルピン点眼薬は瞳孔を収縮させる効果があり、スマホや本、テレビの距離 (近距離から中間距離) にある物を見る視力を改善します。
ピロカルピン点眼薬は15分以内に効果が出て、その効果は最大6時間まで続きます (参考文献 1) 。
勉強や仕事中など、机やパソコンなどを見ることが多い時間にピロカルピン点眼薬を使うと、老眼症状が和らぐかもしれません。
この目薬に関しては、40歳から55歳の老眼患者さんの323名を対象として、アメリカで2018年から2019年にかけて治験が行われています。毎日両眼に1回ずつ点眼することで、点眼後に老眼が改善して近くが見えやすくなったことが確認されました。
目薬の副作用
ただし、この目薬にはさまざまな副作用がある、ということも同時に報告されました。
最も一般的な副作用は頭痛で、14.1% と高頻度です。しかし、そのうち 87% の方は治療の必要がない、程度の軽い一時的な頭痛でした。
その他にも、目の見えにくさを自覚した方が 7.3% 、白目の充血、目のかすみ、目の刺激、目の痛みという副作用が出た方はそれぞれ 2.5% と報告されています (参考文献 4) 。
この薬は今のところ日本で未承認なので、皆さんがすぐにお使いになれるわけではありませんが、こうした老眼治療への新しい選択肢が今後増えていくと良いですね。
老眼が気になる方は眼科へ
老眼になったのかな?と思っても、別の病気が隠れていることがあります。「近くが見えにくくなった」と感じてお困りの方は、眼科を受診して相談してみてくださいね!
COI
本記事について、開示すべき COI はありません。