まとめ
- 麻疹は非常に広がりやすい感染症。患者と同じ空間にいるだけで感染します。
- 重症化・後遺症のリスクが高く、死亡することもある病気です。
- ワクチンによる予防が大切!接種歴を確認しましょう。
時々、麻疹 (はしか) の感染者が発生したニュースを見ることはないでしょうか。
都道府県によっては、発症者の行動歴などを公開し、注意喚起を行っています。
なぜ麻疹では行動歴の公開などをするのでしょうか。
今回は、麻疹の感染力の強さや症状、予防法について解説していきます!
この記事を書いた人
Lumedia の中の学生
Lumedia 編集部の医師による指導のもと、記事を執筆しています。
麻疹ってどんな病気?
非常に強い感染力
麻疹は麻疹ウイルスによる感染症で、2週間ほどの潜伏期の後、発症します。主な感染経路は空気感染です。
空気感染する病原体は非常に感染力が強く、感染者と同じ空間にいるだけで感染するほどです。空気感染する代表的な感染症には、麻疹 (はしか) 、水痘 (水ぼうそう) 、結核があります。
麻疹の症状
麻疹の症状には①カタル期 ②発疹期 ③回復期 の3つのフェーズがあります。
①カタル期
発症した初期のフェーズをカタル期と呼びます。
2〜4日続く38℃の発熱と倦怠感、咳や鼻水、喉の痛みのほか、目の充血や目やにが増える、眩しさを感じるといった目の症状が出ます (参考文献 1) 。
②発疹期
症状が出現してから2〜4日ほど経つと、発疹が出現します。
発疹は顔周りから始まり、次第に体幹部、腕、足へと広がっていきます。
発疹期には、カタル期から一旦熱が下がった後に再発熱します。体温の山が2回できることから「二峰性発熱」とも呼ばれます。この時期には全身のリンパ節腫脹、咽頭炎のほか、カタル期同様の呼吸器症状も現れます (参考文献 1) 。
③回復期
次第に熱は下がっていきますが、咳は1〜2週間ほど続くことがあります (参考文献 1) 。
なお、学校は解熱後3日経過するまで登校禁止となります。
子どもでは合併症発症率が高いことが知られており、麻疹で亡くなる患者の多くは肺炎や脳炎を合併したことにより死亡しています。
麻疹の恐ろしさ
2大死因の肺炎・脳炎
医学が発展した今日でも、麻疹は死亡リスクが高い疾患の一つです。死因の多くは、麻疹の合併症である肺炎・脳炎です。
肺炎は麻疹に感染した子どもの約20人中1人が合併し、子どもの麻疹患者の死因トップを占めます (参考文献 2) 。
脳炎は約1000人中1人の割合で合併します。発症した場合、25% に神経発達の後遺症が残るとされ、致死率は 15% にのぼるとされています (参考文献 1) 。
これを聞いて「意外と低いな」と感じる人がいるかもしれませんが、麻疹は感染力が「非常に」強い感染症であることを思い出してください。社会全体で考えれば、麻疹による重症合併症患者や死亡患者があっという間に発生してしまいます。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
SSPE は、麻疹の感染後7~10年という長い期間をあけて発症する重篤な合併症です。
病態は十分に解明されておらず、治療法も確立していません。
2歳までに麻疹に感染した場合、SSPE を発症する可能性が高くなります (参考文献 2) 。
発症すると性格変化・学業不振・異常行動や運動能力の低下など、神経障害の症状が徐々に現れます。進行速度は様々ですが、ほとんど意思疎通がとれないような状態にまで状態が悪化して、最終的には死亡することが多いです (参考文献 1、2) 。
ワクチンによる予防が重要!
ワクチンの有効性
麻疹は空気感染で感染が広がりやすいうえ、重症化リスク・死亡リスクも高いです。そのため、予防が大切になってきます。
日本では、MRワクチン (麻疹・風疹ワクチン) を1歳と小学校入学前の計2回の接種が推奨されています (参考文献 4) 。
1回の接種で約 95%、2回の接種で 99% 以上の人が免疫を獲得するとされています (参考文献 3) 。
アメリカでは1963年にワクチンが認可されて以降、麻疹の発生率が 95% 以上減少しました。
当初は1回だけの接種でしたが、1980年代に1回接種した集団に麻疹の流行があったため、以降2回接種が推奨されるようになったという歴史があります。
2回接種することで、麻疹に対する免疫をより強固なものにすることができます。しっかりと2回接種するようにしましょう。
ワクチンの副反応
MRワクチン接種後の副作用として知られている症状に、発熱・発疹・鼻汁・咳嗽・注射部位の紅斑・腫脹がありますが、これらは基本的に自然に治ります。
アナフィラキシー等の重度のアレルギー歴がある方は、ワクチンに含まれるその他の成分による急性のアレルギー反応が生じる可能性があるため、接種する際は医師に相談するようにしてください。なお、以前MRワクチンの原因となった成分のゼラチンは現在使用されているワクチンには含まれておらず、安全性が向上しています。
ワクチンと聞くと「卵アレルギーがあるから接種できないのでは」と考える方がいます。MRワクチンはニワトリの胚細胞を用いて製造されており、卵自体は使用していないため、卵アレルギーによるアレルギー反応の可能性はほとんどないとされています。
アナフィラキシー症状に対する対策は他の予防接種と同じです。 接種後に「待合で○○分待機していてください」などの指示がありますが、これはワクチン接種後に症状が出たときに医療者が対応できるようにするためです。
自分と周りの人を守るために、MRワクチンはぜひ接種してください。
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