Lumedia 顧問の勝俣範之先生 (日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授) が執筆した「HPVワクチンって有効なんでしょうか?」という記事が、毎日新聞の『医療プレミア』に第7弾として掲載されました!
医療プレミアは、「長く健やかに暮らす」ことをめざして、健康の役立つトピックを分かりやすく伝えるメディアです。Lumedia 顧問を務める勝俣教授が「がんによくある誤解と迷信」というコラムを、Lumedia 出張版として同サイト内で執筆しております。
「国民の2人に1人が罹患する」とされるがんの予防や治療に関して、適切な科学的根拠に基づいた正確な知識をお届けしていきますね。
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※第6弾の「がんの『標準治療』とはなんでしょうか?」をまだお読みでない方は、こちらをご覧ください。
HPV 感染症とはなんですか?
HPV は Human Papilloma Virus の略で、ウイルスの名前です。Human Papilloma Virus (ヒト パピローマ ウイルス) は、人間の皮膚や粘膜に感染し、200以上の種類があり、さまざまな疾患と関連しています。
子宮頸がんの患者の 90% 以上に HPV 感染が確認され、子宮頸がんの発症に強く関連しているとされています。
HPV ワクチンは、HPV 感染症を予防するワクチンとして導入され、現在では125ヵ国以上の国で採用されています。
HPVワクチンの種類について
日本では長らく差し控えられていた HPV ワクチンの積極的勧奨が、2022年4月から再開されることとなりました。
HPVワクチンには、2価、4価、9価など、いくつかタイプがあります。この「価」というのは「何種類 HPV の型を予防できるか」ということを意味しています。
例えば、2価ワクチンで予防できるのは、子宮頸がんのリスクが最も高い型 (HPV 16/18型) になります。
HPVワクチンの有効性について
HPVワクチンの有効性については、医療情報の中でも最も信頼できる情報であるランダム化比較試験や、ランダム化比較試験の統合解析をしたシステマティックレビューのデータがあります。これらの研究によって、HPV ワクチンが、子宮頸がんの前がん病変である上皮内腫瘍の発症リスクを低下させることが示されています。
前がん病変の発症リスク低減のみならず、 HPV ワクチンの接種が子宮頸がん (浸潤がん) の発症リスクを減らすことを示唆する観察研究の結果が、近年次々と報告されています。
※詳細なデータは毎日新聞の記事にて解説されています。ご興味のある方は毎日新聞コラムをご覧ください。
HPV ワクチンの副反応について
ワクチン接種後の副反応 (ワクチンで生じた副作用を「副反応」と呼びます) には、注射部位の疼痛、腫脹、紅斑、掻痒感、全身症状は、頭痛、発熱、悪心、めまい、倦怠感などがあります。日本で HPV ワクチン接種が始まった後に、テレビなどで HPV ワクチン接種後の重篤な副反応事例が取り上げられ、大騒ぎになりました。
その結果、厚生労働省は、副反応としての因果関係は不明としながらも、2013年4月に定期接種化された HPV ワクチンの積極的推奨を、同年6月に取り消すこととしました。因果関係が証明されていないのに、HPV ワクチン推奨を取り消したのは、世界でも日本のみでした。このことは、WHO からも批判を受けました。
これらの副反応が、本当に HPV ワクチンの接種と因果関係があるのかは、 HPV ワクチンを接種していない人と比べないと分かりません。
HPV ワクチンについて、接種と副反応との因果関係を検討したシステマティックレビューでは、重篤な有害事象の発症率は、HPV ワクチンを接種した人と接種していない人の間で統計学的に有意な差はないと報告されました。さらに、死亡率にも有意差はありませんでした。
2018年には名古屋市で HPV ワクチン市販後の副反応に関して大規模なアンケート調査が行われ、その結果が報告されました (名古屋スタディ) 。この研究では、月経不順、疼痛、倦怠感、記憶障害、歩行困難、四肢の脱力を含む 24 の症状に関してワクチン接種者と非接種者とで比較しました。その結果、ワクチンの接種者と非接種者の間で症状の発現に差はなく、ワクチンとそれらの症状との因果関係は示されませんでした。
今回の毎日新聞の記事では、HPV ワクチンについて図やグラフも用いて詳しく説明しています。また、HPVワクチンの有効性や副反応について検討した研究についても、詳しいデータを元に解説されています。
この記事を読むことで、HPV ワクチンについての知識がさらに深まるはずですので、ぜひご一読ください!
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