マグネシウムサプリは健康に良いのか?

まとめ

  • マグネシウムはエネルギー代謝や神経・筋肉・骨の健康に欠かせない必須ミネラル。
  • 食事の工夫で多くの場合は十分に補えるため、サプリは必須ではない。
  • サプリは効果が限定的で、過剰摂取には注意が必要。「まずは食事から」が最も安全で科学的な方法。

皆さんはサプリメント、使ったことはありますか?

健康や美容への関心が高まる中、「サプリメント」は今や生活に身近な存在となっています。コンビニでも手軽に購入できるようになり、「不足しがちな栄養素をサプリで補う」という考え方は広く浸透しています。

その中でも、近年とくに注目されているのが「マグネシウム」です。
ネットやSNSでは「血糖値を下げる」「血圧を安定させる」「ストレスを和らげる」「睡眠の質が向上する」といったさまざまな効果が紹介されています。

しかし、こうした情報はすべて科学的に裏付けられているのでしょうか。
また、「日本人の多くはマグネシウム不足」といった主張は本当なのでしょうか。

インターネット上では断定的な情報が目立つ一方で、実際には誤解や誇張が含まれている場合も少なくありません。
この記事では、最新の医学的エビデンスをもとに、マグネシウムの働きや摂取状況、サプリメントの有用性について解説します。

この記事を書いた医師の名前

大坂 貴史

Takafumi Osaka

1. マグネシウムとは?その働きと重要性

マグネシウムは、人の体に欠かせない「必須ミネラル」の一つです。体の中では300種類以上もの酵素の働きを助けていて、さまざまな代謝がスムーズに進むための「潤滑油」のような役割をしています。

人が活動するためのエネルギーはATP (アデノシン三リン酸) という物質から作られますが、ATPは「マグネシウムATP」という形になって初めて体の中で働けるようになります。そのため、マグネシウムが不足するとエネルギーが作られにくくなり、疲れやすくなったり集中しにくくなる可能性があります (参考文献1) 。

また、神経や筋肉の働きにも深く関わっています。筋肉は縮むだけでなく、「緩む」ことも大切ですが、この緩む動きを助けるのがマグネシウムです。不足すると、足がつる、筋肉がピクピクするなどの症状が出やすくなります。また心臓のリズムや血管の動きにも関係しているため、動悸や血圧の変動とのつながりも指摘されています (参考文献1) 。

さらに、マグネシウムは骨の健康にも必要です。骨といえばカルシウムが有名ですが、実はマグネシウムやビタミンD、リンなど、いくつかの成分が協力し合って骨を作っています。骨の中にはカルシウムの約半分に相当する量のマグネシウムが含まれていて、マグネシウムも骨密度を保つために重要なミネラルと言われています (参考文献2) 。

2. 体内の分布と「潜在的欠乏」

体内のマグネシウムの約60%は骨に、約30%は筋肉に存在し、血液中に含まれるのは全体の1%未満です。そのため、血液検査の値が「正常」であっても体内全体でみると、実際は不足していた、という場合があります。これが「潜在的欠乏」と呼ばれる状態です (参考文献 2) 。

慢性的なストレス、偏った食生活、過度の飲酒、カフェインの過剰摂取、糖質の多い食事などは、体内のマグネシウムを消費しやすくします。さらに、利尿薬、特定の抗生物質、プロトンポンプ阻害薬 (胃酸を抑える薬) などの使用によって、マグネシウムが排出されやすくなることもあります。

このように、マグネシウムは「気づかないうちに不足しやすいミネラル」であるため、健康意識の高い人々の間で注目が集まっています。

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3. 食事から摂れるマグネシウム

マグネシウムはさまざまな食品に含まれていますが、現代では精製度の高い食品 (自然の状態から不純物や食物繊維等を取り除いた食品) を選ぶことが多く、全体的な摂取量は減少傾向にあります。

主な供給源は以下のとおりです (参考文献 3) 。

  • 大豆製品:納豆1パックに約50mg、豆腐半丁に約60mg
  • ナッツ類:アーモンド30gに約100mg
  • 魚介類:サバ1切れに約40mg、イワシ1尾に約30mg
  • 海藻類:ひじきやワカメなど、ミネラルが豊富
  • 緑黄色野菜:ほうれん草1束に約70mg
  • 穀物:玄米1膳に約50mg、そば1人前に約40mg

白米やパンなどの精製食品が中心になると、どうしてもマグネシウムの摂取量は少なくなります
そのため、精製度の低い食品 (玄米、全粒粉パン等) に普段の食事を変えてみるといった工夫をし、意識して取り入れることが、日常的にマグネシウムを確保するためのポイントです。

4. 日本人の摂取状況とサプリの必要性

厚生労働省が示す「食事摂取基準 (2025年版) 」では、マグネシウムの推奨量は成人男性で1日320〜370mg成人女性で260〜290mgとされています (参考4) 。一方、国民健康・栄養調査のデータでは、実際の平均摂取量はこれらの値をわずかに下回っており、特に若い世代で不足が目立ちます。近年はファストフードや精製された穀類を中心とした食事が増えているため、結果としてマグネシウムを十分に取りにくい食生活になっていることも背景にあると考えられます。

ただし、「平均より少ない=すぐに健康被害が生じる」というわけではありません。
筋けいれんやしびれ、不整脈などが現れるレベルの明確な欠乏症は、かなり深刻な不足状態で起こるものです。多くの人はそこまでのレベルには至っていないと考えられます。

つまり、「不足気味ではあるが、通常の食生活でも概ね必要量をカバーできる」というのが現実的な評価です (参考文献 5) 。

5. サプリメントの科学的エビデンス

マグネシウムと各種健康指標との関連については、多くの研究が行われています。ここでは主要な領域ごとに科学的エビデンスを整理します。

血圧

これまでの報告をまとめた研究では、マグネシウムの摂取によって収縮期・拡張期ともに平均1〜2 mmHg程度の小幅な降下が報告されています。

特に、1日400mg以上の摂取を12週以上継続した場合、高血圧・低マグネシウム血症の人では効果がやや大きくなる (降下しやすい) 傾向があると報告されています。

ただし、これは軽度の高血圧者に限られ、正常血圧の人ではほとんど変化が見られないという点が重要です (参考文献 6) 。

糖尿病とインスリン抵抗性

観察研究では、「マグネシウムをたくさんとっている人ほど、糖尿病になりにくい」という傾向が見つかっています (参考 7) 。これは、マグネシウムが血液中のブドウ糖を細胞に取り込みやすくし、インスリンという血糖値を下げるホルモンの働きを助けてくれるためだと考えられています。

しかし、実際にマグネシウムのサプリを使って効果を調べた、より信頼性の高い研究 (RCT) では、次のような結果が出ています (参考文献 8) 。

  • 空腹時血糖 (FPG) は少し下がりやすい
  • HbA1c (1〜2か月の平均血糖値) は、ほとんど変化しないか、結果がバラバラ

つまり、「少しは効果があるかもしれないけれど、治療としては強くすすめるほどではない」ということです。

実際、アメリカ糖尿病学会 (ADA) のガイドラインでも
血糖コントロールのためにマグネシウムサプリを使うことはおすすめしない
と明確に書かれています (参考文献 9) 。

心血管疾患

マグネシウムが足りない状態 (低マグネシウム血症) は、心筋梗塞や不整脈などのリスクが高まることが報告されています (参考文献10, 11) 。これは、体の中の電解質バランスが乱れると、心臓の筋肉の動きに影響して、リズムが乱れやすくなるためだと考えられています。

ただし、マグネシウムのサプリを飲むことで、心筋梗塞や脳卒中、死亡のリスクが減ることを示すより信頼性の高い研究は、今のところありません。観察研究で関連が見つかることはありますが、「サプリを飲むと必ずリスクが下がる」とはまだ言えないのが現状です。

まとめると…効果が出るのは「不足している人」

これらのエビデンスから分かるのは、

  • 体内で不足している人には一定の効果が期待できる
  • すでに十分摂取できている人には、サプリで大きな変化はほぼ見られない

という点です。
つまり、マグネシウムサプリは「万人に効果がある万能サプリ」ではなく、
不足が疑われる人に限定的に役立つ可能性がある」という位置づけが最も科学的に妥当だと言えます。

6. サプリが強く推奨されない理由

マグネシウムのサプリが「万能ではない」理由はいくつかあります。

まず、吸収効率の問題です。マグネシウムには酸化物、クエン酸塩、乳酸塩などの形があり、吸収率は20〜50%と差があります。特に酸化マグネシウム (安価なタイプ) は吸収が悪く、多くが便として排出されます。

次に、摂りすぎのリスクです。健康な腎臓があれば通常は余分なマグネシウムを排出できますが、サプリで大量に摂ると下痢や腹痛を起こすことがあります。腎機能が低下している人では血中マグネシウムが上昇し、高マグネシウム血症 (倦怠感、徐脈、血圧低下など) を起こす危険もあります。

さらに、効果の個人差も大きいです。ストレスや食生活、腸内環境、薬の影響などによって吸収・利用効率が異なるため、一律に「○mgで効果がある」とは言えません。

そのため、サプリは“誰でも飲めば健康になる魔法の錠剤”ではなく、「特定の人に限定して効果がある可能性がある」という位置づけが妥当です。

7. サプリに頼らない食事の工夫

マグネシウムを無理なく補うためには、サプリメントに頼るよりも、日々の食事に少しずつ工夫を取り入れる方法が最も現実的です。たとえば、朝食のパンを全粒粉に変えたり、そば粉入りのものを選ぶ、昼食に豆腐や枝豆を加える、おやつとしてナッツをひとつかみ食べる、夕食の味噌汁にワカメやひじきを足すなど、ほんの少しのアレンジで摂取量を大きく増やすことができます。こうした積み重ねだけで、1日あたり100〜200mg程度は自然に増やすことが可能です。

さらに、カルシウム、ビタミンD、タンパク質などの栄養素と一緒に摂ることで、相乗的に健康維持に役立つ点も重要です。一方で、加工食品や清涼飲料水の過剰摂取、塩分やアルコールの摂りすぎはマグネシウムの排泄を促してしまうため、これらを控えることもマグネシウム不足を防ぐ上で大切なポイントになります。

8. 結論:マグネシウムは“バランス”が大切

マグネシウムは確かに重要なミネラルであり、不足すると多くの体調不良につながります。しかし、「足りないからといってサプリを飲めばすぐ良くなる」という単純な話ではありません。

多くの人は食生活のちょっとした改善で十分に補うことができます。サプリメントは、食事だけでは補いにくい人、または医師から指導を受けた場合に限って利用するのが安全です。

言い換えれば、「マグネシウムは必要だが、サプリは必須ではない」。

エビデンスがまだ十分でない以上、“予防や治療の目的で積極的に勧める”段階にはありません。

日常の食事を整えることが、最も確実で、最も科学的なマグネシウム補給法なのです。

COI

本記事について、開示すべきCOIはありません。