臨床研究とは、ヒトを対象にした研究全般のことを指します。これは実際に予防・治療を行って効果を調べるもの (介入研究) だけでなく、患者さんのデータを集めて分析することや対象患者のその後を追って調べることなどを主体とする研究 (観察研究) を含みます。
介入研究の例
肺がん患者に抗がん剤を投与した際の生存年数の調査
観察研究の例
タバコを吸っている人と吸っていない人での肺がん死亡率の比較
臨床試験とは、医薬品や医療機器の安全性や有効性の確認のために、実際にヒトに使い、どの程度の効果があるか、副作用はどのようなものがあるかなどを調べるもののことを言います。
その中で、厚生労働省による承認を目的としたものを「治験」と呼びます。
ここで、医薬品承認の過程を説明していきましょう。
(実際には医療機器の承認も同様の過程を取りますが難しくなってしまうので医薬品として説明します)
医薬品承認の過程
基礎研究 / 非臨床試験
まず、アルツハイマー型認知症の原因を探り、それを取り除くような物質を作り、薬の形にして、安全性・有効性を調べることから始まります。この過程に必要なのが基礎研究や非臨床試験です。
基礎研究というのは病気の性質や身体の構造について調べる研究のことです。
アルツハイマー型認知症の例で言えば、この病気をもつ患者さんの脳でアミロイドβという物質が多く見られることが明らかになっています。そこで、これを減らす物質 (抗体など) を作ることができれば、治療に役立つ可能性がある、という話になります。
非臨床試験というのは、動物や細胞培養を用いて薬の安全性や有効性を調べる試験のことで、典型的にはマウスなどの動物が用いられ、毒性や効果について調査を行います。
第Ⅰ相試験
薬が完成し、動物実験の結果から効きそう、安全そう、ということがわかれば、そのあと人間に対して使用し、安全性や有効性を調べることになります。通常はまずはじめに、少数の健康な人に対して投与して安全性や薬物動態、つまりどのように体に取り込まれ、体のどこを通りながら、体の外に出ていくかどうかを確かめます。これを第Ⅰ相試験といいます。
健康な人を対象にして行うのは患者さんに比べて集めるのが簡単であることや、患者さんが他に使っている薬による影響が少ないといった理由があります。
第Ⅱ相試験
健康な人に使用した後、ついに患者さんに薬を使用することになります。
ここで問題となるのが、薬の量や方法となります。
動物実験の結果などからある程度ヒトに対する量は想定できるとはいえ、マウスとヒトでは体の機能や構造が異なるので、慎重に決める必要があります。
そこで行われるのが第Ⅱ相試験であり、比較的病気の状態が軽い患者さんに少量から投与して、最も効果の高い薬の量や投与間隔などを調べます。
第Ⅲ相試験
第Ⅱ相試験で安全性がある程度確認できたら、次に第Ⅲ相試験に移ります。
ここでは第Ⅱ相よりも多くの患者を集めて薬を投与し、プラセボもしくは既存の治療との比較を通して有効性を立証することが目的となります。
ここまできてやっと、承認申請を行い、正式に薬が承認されることになります。
※希少疾患の場合には、第Ⅱ相試験後に薬が承認されるなどの例外もあります。