川崎病は合併症・後遺症に注意が必要!病院で早めに適切な治療を受けましょう

カテゴリ:小児科

公開日:2023/08/17/

最終更新日:2023/08/22

まとめ

  • 川崎病では心臓の血管である「冠動脈」に合併症がおきたり、後遺症を残したりすることがある
  • 冠動脈の後遺症が残った場合、川崎病が治った後も薬を飲み続けたり、場合によっては手術が必要になったりすることも
  • 冠動脈の合併症によって生活への影響がでることもあるので、川崎病を適切に治療することが大切

前回の川崎病の記事では、川崎病の症状のほかに、川崎病が合併症を引き起こしうる病気であることを紹介しました。今回の記事はその続編で「川崎病の合併症・後遺症」を中心とした記事です。

川崎病では心臓の血管である「冠動脈」に合併症・後遺症が現れることがあり、注意が必要とされています (参考文献 1) 。今回の記事では、①冠動脈の合併症・後遺症とはどのようなものなのか冠動脈に後遺症が残ったときに起こり得る影響について紹介します。

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Lumedia 編集部の医師による指導のもと、記事を執筆しています。

川崎病では「冠動脈」に合併症・後遺症をおこすことがある

冠動脈とは

全身の血管に炎症が起きる川崎病では、「冠動脈」という血管にも影響を及ぼすことがあります。この「冠動脈」とは、下の図で丸く囲った部分の血管で、心臓に酸素を送り届ける大切な血管です。

心臓の血管 (看護 roo ! 看護師イラスト集 の画像をもとに編集 )

川崎病では冠動脈に瘤 (こぶ) ができることがある

川崎病の合併症・後遺症として問題になるのは、この冠動脈に瘤 (こぶ) ができてしまう「冠動脈瘤 (かんどうみゃくりゅう)」という病気です (参考文献 1, 2)。

冠動脈瘤ができると、そこで血の流れが悪くなり、血が固まって血栓をつくることがあります (参考文献 1, 3) 。また、冠動脈瘤が後遺症として残った場合には、若くても冠動脈の動脈硬化 (※) のリスクが高くなり、これも血栓ができてしまうことにつながります (参考文献 2, 3) 。
動脈硬化とは、動脈の血管が硬くなって弾力性が失われた状態のことです

冠動脈瘤の中の血栓が大きくなったり、血栓が血の流れにのって飛んでいったりした結果、冠動脈が詰まって「心筋梗塞 (しんきんこうそく)」になることがあります (参考文献 1, 2, 3)。
心筋梗塞になると、症状として強い胸の痛みや呼吸のしにくさが出たり、心臓の細胞に酸素や栄養が届かなくなった結果、詰まった血管に頼っていた細胞がダメージを受けて死んでしまったりします。

冠動脈の病変に対しては、追加で治療が必要になることもある 

重症度にもよりますが、冠動脈の病変に対しては、川崎病の他の症状が改善した後もを飲み続けたり、場合によってはカテーテル治療 (※) や手術が必要になる場合があります (参考文献 1, 4) 。これらの治療は、冠動脈瘤の中で血栓を作ったり、心筋梗塞になったりすることを防ぐためのものです。

※カテーテル治療のイメージ図 (看護 roo ! 看護師イラスト集 より)
細長い医療機器を血管に沿って入れていき、その先にある冠動脈の治療をします

冠動脈後遺症の約半数は1年以内に回復に向かっていくとされていますが、冠動脈瘤の重症度が高い場合には、時間がたっても冠動脈の形が戻らずに、長い期間後遺症として残ってしまうことが多いです (参考文献 1, 3) 。

川崎病の後遺症は日常生活にも影響を及ぼすことがある (参考文献 3)

冠動脈病変が後遺症として残った場合、その重症度によっては生活や運動に制限がかかることがあります。例えば、大きな冠動脈瘤が残ってしまった場合や、冠動脈の病変によって冠動脈が狭くなってしまった場合、強い運動をすることを禁止される場合があります。

この強い運動には、かけっこやサッカーをはじめとした競技、クロール (水泳) 、激しいダンスといったスポーツのほか、登山やサーフィンといった野外活動、トランペット・トロンボーンなどの体力を相当使う楽器の演奏などの文化的活動まで含まれます。

このように、冠動脈の後遺症は、昨今よく言われる Quality of Life (生活の質) に大きく関わってくることがあります。

川崎病は専門的な治療が大切

前回記事のおさらいになりますが、治療法が進歩する以前は患者さんの4人に1人 (25%) 程度に後遺症が生じていましたが、近年では100人に2~3人 (2~3%) 程度の割合まで減少しています (参考文献 1, 5) 。その後の生活に制限がかかるような後遺症の発生率も年々減少を続けています (参考文献 3) 。

裏を返せばこれらの後遺症の予防をするためには、専門的な治療が重要であるということにもなります。前回の記事で川崎病の症状などをおさらいして、怪しいなと思ったらお子さんを病院へ連れていきましょう!

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