Lumedia 出張版『毎日新聞医療プレミア』第8弾「不要ながん検診を知っていますか?」が公開されました!

カテゴリ:お知らせ

公開日:2023/06/08/

Lumedia 顧問の勝俣範之先生 (日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授) が執筆した「不要ながん検診を知っていますか?」という記事が、毎日新聞の『医療プレミア』に第8弾として掲載されました!

医療プレミアは、「長く健やかに暮らす」ことをめざして、健康の役立つトピックを分かりやすく伝えるメディアです。Lumedia 顧問を務める勝俣教授が「がんによくある誤解と迷信」というコラムを、Lumedia 出張版として同サイト内で執筆しております。

「国民の2人に1人が罹患する」とされるがんの予防や治療に関して、適切な科学的根拠に基づいた正確な知識をお届けしていきますね。

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※第7弾の「HPVワクチンって有効なんでしょうか?」をまだお読みでない方は、こちらをご覧ください。

医学生でも誤解しがちな検診の有効性

著名人ががんで亡くなると「早期発見、早期治療が大切ですから、がん検診を受けましょう」といったコメントがされる場合があります。「がんは早期発見、早期治療が大事」とよく言われる言葉です。しかしすべてのがんに早期発見、早期治療が有効であるか?というと、答えは「NO」です。

次の問題は第106回 (2012年) 医師国家試験問題に出題された問題ですが、答えはどれでしょうか?

問: 集団に対してある癌の検診を行った。検診後に観察された変化の中で、検診が有効であったことを示す根拠はどれか。

  • a 検診で発見されたその癌の患者数の増加
  • b 検診で発見されたその癌の患者の生存率の上昇
  • c 集団全体におけるその癌の死亡率の低下
  • d 集団全体におけるその癌の罹患率の低下
  • e 検診に用いられた検査の陽性反応適中率の上昇

「早期発見で見つかったがんは、生存率が良い」という話を聞いたことがあるかもしれません。そう考えると、正解は “b” のように思うかもしれませんが違います。正解は  “c”  なのです。医師の国家試験にも出題されるということは、誤解している医師も多いということです。

がん検診は確かに大事ですが、「がんは検診さえしておけば、大丈夫」、「がん検診しておけば、がんは克服できる」のようなメッセージは大変誤解を生みやすいです。検診が有効ながんは、一部のがんに限られ、検診が有効でないがんもある。むしろデメリットが多くなるがんもある」という理解が正確です。

検診に向かないがんとは

がんには、非常に進行速度が速いがんや、逆に進行速度が比較的遅いがん、ほとんど進行しないがんがあることがわかっています。米国国立がん研究所はがんの種類を進行速度別に分類して、①急速に進行するがん (急速がん) 、②比較的ゆっくり進行するがん (のんびりがん) 、③非常にゆっくり進行するがん (超のんびりがん) 、④がんであるがほとんど進行しないがん、の4つに分類しています。

①急速に進行するがん (急速がん)

①急速に進行するがん (急速がん) は、数カ月もしくは数週間のうちに、あっという間に進行がんになってしまうがんで、これらのがんが検診で見つかることはほとんどありません。「毎年人間ドッグに入っていたのにがんが見つからなかった」「半年前にがん検診を受けたのに、進行がんが見つかってしまった」などの声を聞いたことがあるかもしれませんが、急速がんは毎年検診していても、あっという間に進行するので、検診で見つからないのです。

たとえば①急速に進行するがん (急速がん) の1つとされる卵巣がんは、発見された際には、半数以上が進行がんで見つかるという難治がんの一つです。CA125 という血液中の腫瘍マーカーを定期的に測定するのと、経腟超音波検査を定期的にするのとを組み合わせた検診法の有効性を検証するランダム化比較試験では、検診群は非検診群と比べて、発見率はわずかに増加するものの、死亡率を減少させることができず、卵巣がんに対する CA125 測定と経腟超音波検診は無効と判断されました。

③非常にゆっくり進行するがん / ④がんであるがほとんど進行しないがん

一方、③非常にゆっくり進行するがん (超のんびりがん) は進行がゆっくりなため、定期的な検診をせずに放っておいてもよいがんです。この種のがんは症状が出ることはなく、転移もせず、がんによって亡くなることもほとんどありません。定期的ながん検診は必要はなく、何か症状が出た際に見つけて、治療をすれば十分に間に合います。前立腺がんや一部の乳がんが代表的です。
また④がんであるがほとんど進行しないがんは、その名の通りがんと診断されてもほとんど進行しないがんです。一部の甲状腺がんが該当します。

これらのがんを検診で見つけて治療することは、必ずしも生存期間を延長せず、手術を含めた治療が大きな弊害をもたらすこともあります。このようながんを検診で見つけてしまうことを過剰診断・過剰治療と呼びます。

今回の毎日新聞の記事では、がん検診の有効ながんや、そうでないがんについて図やグラフも用いて詳しく説明しています。この記事を読むことで、がん検診についての知識がさらに深まるはずですので、ぜひご一読ください!
不要ながん検診を知っていますか?

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※出張版の本記事も、普段の記事と同様に Lumedia 編集部でのチェックを経て正確性を担保しておりますのでご安心ください。査読作業は、帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 病院教授 渡邊清高 先生にお願いいたしました。

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