アトピーなどの皮膚炎に効果的!「プロアクティブ療法」について皮膚科専門医が解説

まとめ

  • アトピーなどで皮膚炎を繰り返す方には「プロアクティブ療法」が推奨されます。
  • 肌荒れが落ち着いてからも塗り薬を一気に止めずに使用頻度を徐々に減らす手法です。
  • 肌荒れの再発を抑えることができるので、気になる方は病院でご相談ください。

アトピーなどの皮膚炎でお悩みの方は、赤みや痒みなどの肌トラブルを何度も繰り返すことがあります。

実際に皮膚科の外来では、患者さんから「前の病院ではいつもステロイドを処方されるだけでした。確かに薬を塗れば一度は肌がキレイになるのですが、塗るのをやめるとすぐに症状がぶり返してしまうので困っています。再発を防ぐ方法は無いのでしょうか?」と相談を受ける機会が多くあります。

そうしたお悩みをお持ちの方には、「プロアクティブ療法」という治療法が有効です。

プロアクティブ療法は2008年に発案された比較的新しい手法ですが、今では研究が進んで広く応用されており、日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎のガイドラインでも推奨されています (参考文献 1,2)。

今回の記事では、プロアクティブ療法とはなにか、メリットについて皮膚科専門医が解説していきます。

この記事を書いた医師

江畑 慧

Satoshi Ebata

プロアクティブ療法とは?

再発しにくい良い状態をキープする治療法

プロアクティブ療法は、同じ場所に皮膚炎を繰り返す患者さんのために開発された治療法です (参考文献 3)。

プロアクティブ療法を用いるタイミングは、「いったん強めの治療で肌荒れが落ち着いた後」です (参考文献 1)。
皮膚炎が重い方の場合、薬を塗って肌がいったんキレイになったように見えても、実は皮膚の下にわずかな炎症が残っていることがあり、これが再発の原因となります。
プロアクティブ療法を行うと、このわずかな炎症もしっかりと抑えて、再発がしにくい良い状態をキープできるのです。

プロアクティブ療法の効果を調べた研究は色々あります。たとえば2002年にアメリカのグループが発表したランダム化比較試験の結果によると、「アトピー性皮膚炎の症状が改善した後、週2回はステロイドを塗ることを16週間にわたって継続した患者さん達では、何もしなかった患者さん達と比べると、アトピー性皮膚炎の症状が再発する確率が8割以上少なかった」とのことでした(参考文献 4)。

プロアクティブ療法の方法

プロアクティブ療法を導入する大まかな流れは次の通りです (参考文献 3,5)。

  • まずはステロイドもしくはタクロリムスという塗り薬(炎症を抑える薬)を1日1,2回塗って、肌をキレイな状態にする
  • キレイな状態に落ち着いたら、ステロイドやタクロリムスの使用頻度を徐々に減らして、週に2,3回程度だけ塗るようにする。

※一例として、「1日2回」⇒「1日1回」⇒「2日に1回」⇒「週2回」というように、数週間おきにステップダウンする。

  • 保湿剤についてはプロアクティブ療法へ移行してからも毎日何回か塗るのを継続する。

症状が改善してからも炎症を抑える塗り薬を一気にストップするのではなく、段階を追って減量することで、肌荒れがリバウンドしてしまうのを防げるのですね。
一方、ベースとなる保湿剤は使用を減らさずに継続していく形ですから、そこは間違えないように注意が必要です。

塗り薬の塗り方や保湿剤の塗る頻度については、以下の記事も参考にしてみてください。

保湿クリーム

プロアクティブ療法のメリット

参考までにプロアクティブ療法による医学的なメリットとしては、次のような点が挙げられます (参考文献2)。

  • 副作用のリスクが少なくて安全性が高い。
  • 従来の治療法と比べると、肌荒れがぶり返す頻度が減るし、肌荒れする場合の重症度も下がる。
  • 従来の治療法よりも、生活の質が向上する。

肌荒れが落ち着いてからも塗り薬の使用を続けるのは面倒かもしれません。
しかし、辛い症状が再発するリスクを減らせるのは大きなメリットです。

繰り返す皮膚トラブルでお困りの方は、皮膚炎の治療に詳しい皮膚科専門医を受診してプロアクティブ療法について相談してみてくださいね。

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