チョコレートはニキビに悪いって本当ですか?気になる噂を皮膚科専門医が検証!

カテゴリ:皮膚科

公開日:2023/10/12/

最終更新日:2023/10/10

まとめ

  • 「チョコレートはニキビに悪いか?」という話については、以前から様々な研究がなされています。
  • 「関係なさそう」という報告もあれば、「関係ありそう」との報告もあり、現時点では結論は出ていません。
  • 少なくとも遺伝の要素に比べるとチョコの影響は弱そうであり、「ニキビのある方はチョコレート NG !」と考える必要はなさそうです。

皆さんは「チョコレートはニキビに悪い」という噂を聞いたことがありますか?ニキビもチョコレートも身近なものですから、多くの方にとって気になる噂だと思います。本当にチョコレートはニキビに悪い影響があるのかどうかについて、皮膚科専門医が検証してみます!

この記事を書いた医師の名前

江畑 慧

Satoshi Ebata

医師 / 皮膚科専門医 / 医学博士

Lumedia編集長。静岡皮膚科(2024年3月開業/静岡駅徒歩3分)院長。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 Lancet姉妹誌などに多数論文掲載。東大病院病院長賞などを受賞。適切な科学的根拠に基づくスキンケア情報を発信中。

チョコレートとニキビの関係性は不明

結論から申し上げると、チョコレートとニキビに関係があるかは、現時点の医学では「よく分からない」とされています。例えば、厚生労働省所管である独立行政法人国立健康・栄養研究所の HP には、


チョコレートを食べすぎるとにきびが増えるという話を聞いたことがありますか?実はこれ事実かどうかはかなりあやしいのです。

引用元:国立健康・栄養研究所. 食事:チョコレートとにきびの関係は?. (2023年7月24日アクセス)

との記載があります (参考文献 1) 。栄養学のメッカとも言える『国立健康・栄養研究所』でさえ、事実かどうかの明言を避けているわけですね。

なぜ関係性が分からないの?

では、なぜ専門家でも明確なことが言えないのでしょうか?それは、チョコレートとニキビの関係性については、これまでに大規模で決定的といえるレベルの臨床試験がされていないからです。小規模な研究は色々行われているのですが、「チョコレートはニキビに悪い」という報告もあれば、「チョコレートはニキビと無関係」との報告もあります。

「チョコレートとニキビは関係なさそう」とした研究

まず、「チョコレートはニキビと関係なさそうだよ」と報告した研究としては、1969年に JAMA という超一流医学雑誌に掲載された論文が有名です。この研究では、軽いニキビがある65名の方々を、「市販ミルクチョコレートの10倍以上ものチョコレートを含むチョコバー」を食べるグループと、「これとそっくりの全くチョコレートを含まないバー」を食べるグループに分け、ニキビの数に影響があるかどうかを観察しました。

その結果、どちらかのグループのみでニキビが有意に増えるということはありませんでした (参考文献 1,2) 。本研究の結果を見る限りでは、チョコレートとニキビの関係はなさそうですよね。

この研究結果は、日本皮膚科学会のニキビガイドラインでも紹介されています。そのガイドラインでは、「チョコレートなど特定の食物がニキビの悪化要因だという明確な証拠はない」と書かれています (参考文献 3) 。

「チョコレートはニキビに悪そう」とした研究

一方で、「チョコレートはニキビに悪そうだ」との報告もあります。例えば、2016年に JAAD という皮膚科領域では有名な医学雑誌に掲載された研究では、54名の大学生を「チョコレートを食べるグループ」と「ジェリービーンズを食べるグループ」とに分けたところ、「チョコレートを食べた人たちではジェリービーンズを食べた方たちよりもニキビが増えていた」と報告されました (参考文献 4) 。

この結果を踏まえると、「チョコレートはジェリービーンズとは違ってニキビに悪そうだ」と考えられます。ただ、本研究は規模が大きくはないので、この結果だけから決定的なことをいうのは難しいです。

また、今回の研究では「チョコレートを食べたら ”48時間後” にニキビが増えるかもしれない」との報告がされたのですが、食事の影響でニキビが出るタイミングとして「2日後」というのは早すぎる印象もあります。ニキビと食事の関係を調べる研究の場合、一般的には数週間後の肌の状態をチェックすることが多いです (参考文献 5) 。したがって、この研究結果が本当にチョコレートの影響を確認したものと言えるのかは疑問の余地があります。

また、ヨーロッパ7カ国で生活する1万人以上の方を対象とした調査では、チョコレートを食べる方でニキビが多いとの報告もあります。ただ、その程度はあまり強くはなく、食事よりも遺伝の影響が強そうという結果でもありました (参考文献 6) 。この研究も、チョコレートがニキビに与える影響の有無や程度を明確に示したものとは言い難いです。

「チョコレートとニキビの関係性」についての研究は十分進んでいない

以上のように、チョコレートとニキビの関係については色々と研究が進んでいるものの、明確な結論は導き出されていません。例えば、アメリカのニキビガイドラインはチョコレートに関する言及を避けています。このガイドラインは「ニキビを管理する上で特定の食事を変更する必要はない」との推奨文を書いています (参考文献 7) 。

なお、チョコレートとは別に、食事に関しては、

  • グリセミック指数の高い (食後に血糖値が上がりやすい) 食事がニキビと関連する可能性はある
  • 一部の乳製品、特にスキムミルクがニキビに影響する可能性は限定的だがある

との記載ならあります。こうした製品に比べて、チョコレートについては研究の進み具合が遅いと言えるでしょう。

以上、チョコレートとニキビの関係性について、「何とも言いがたい」ということを説明しました。チョコレートをあまり大量に摂りすぎるのは良くないと思いますが、現時点ではニキビ対策として「チョコレートは絶対に NG !」と考える必要も無いでしょう。

健康的な食事を意識することも大切なのはもちろんとはいえ、チョコレートが好きな方は常識的な範囲内で楽しむことは許容されそうです。
なお、ニキビの治療法については、以前の記事で解説しております。

お困りの方は、「チョコレートを抜いて様子を見よう」と考えるよりも、「適切な科学的根拠がそろっているニキビ治療薬を使うべきかどうか相談しよう!」と考えて、ぜひ病院を受診してみてくださいね。

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