まとめ
- ICLは目の中に特殊なレンズ を入れ、メガネやコンタクトなしでよく見えるようにする手術。
- ICL手術ができるかどうかは、年齢、近視の度数、目の状態や病気の有無などで決まる。
- ICL手術の合併症は、ハロー・グレア(光がにじんだり眩しく見えたりする)、感染症、白内障などがある。
最近、InstagramやYouTubeなどで話題になっているICL (眼内コンタクトレンズ) 。皆さんはICLについてどのくらい知っていますか?「興味はあるけどよく分からない」「科学的に正しい情報を知りたい」という人に向けて、この記事で眼科医が詳しく解説します。
ICL (眼内コンタクトレンズ) ってなに?
ICLはImplantable Collamer Lensの略で、「 (目に) 挿入できるCollamerという素材のレンズ」という意味です (参考文献1) 。「目に挿入できるレンズ」ではイメージが付きにくいので、私たち眼科医の間では「眼内コンタクトレンズ」と呼ばれています。
ICL手術を受けることで、メガネやコンタクトレンズを付けなくても、裸眼でよく見えるようにすることができます。
Mayo ClinicのHP、日本眼科医会HPから引用した図を編集して作成
ICL手術のほかに、よく知られている視力矯正の手術としてレーシックがあります。レーシック手術についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
レーシックは目の表面を削るため、元に戻すことはできません(参考文献1)。しかし、ICL手術は後からレンズを取り出せるため、元に戻すことができると注目されているのです。
ICL手術は誰でもできるの?
ICL手術を受けると裸眼の状態でよく見えるようになるため、メガネやコンタクトレンズでの生活をしたくない人にとっては夢のような手術でしょう。しかし、残念ながら希望すれば誰でもICL手術を受けることができる、というわけではありません。
ICL手術は日本眼科学会屈折矯正委員会の出すガイドラインにおいて、その適応条件が設定されています (参考文献2) 。
※「D」とは屈折力の程度を表す単位で、レンズの度数を示すときに用いられます。
これらの適応条件のほかに、そもそも実施ができない禁忌の場合もあります (参考文献2)。
- 妊娠中または授乳中の女性
- 白内障や円錐角膜などの目の病気がある方
- 重い糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身の病気がある方
等の場合は、ICL手術を行うことはできません。
ICL手術にリスクはないの?
ICL手術によって起こる可能性のある合併症には、大きく分けて2種類あります。
レンズ自体の合併症
レンズ自体の合併症として、ハロー・グレアというものがあります (参考文献2) 。ハロー・グレアがあると、光がにじんだり、まぶしく見えたりすることがあります。
手術による合併症
手術による合併症としては、感染症や白内障、緑内障などがあります(参考文献2) 。これらは手術中に目に小さな傷を入れることによるリスクです。
この他にも以下のような合併症が報告されています (参考文献2) 。
- 術後一過性眼圧上昇およびステロイド緑内障
- 網膜剥離
- 近視性脈絡網膜萎縮
- 虹彩切開あるいは虹彩切除による光視症
ICLをやりたいけど、どこでできるの?いくらでできるの?
ICL手術ができる施設は限られていますので、まずはご自身が通院できる地域の眼科を受診するようにしましょう。
Googleで「ICL+地域名」と検索しても良いですが、ICL手術を実施しているクリニックを検索するサイト(https://jp.doctors.discovericl.com/)があるので、近くの眼科が思い付かない人は検索すると良いでしょう。
また、ICL手術の具体的な費用は施設によって異なります。だいたい両眼の手術で40-70万円程度の眼科が多く、さらにその後の定期通院なども必要になるため、その費用もかかってきます。
このようにICL手術は決して安い金額ではありません。上で解説した手術の適応条件や合併症などを、主治医とよく相談してから手術を受けるようにしましょう。
おわりに
最近、ICL手術の広告をInstagramなどでよく見かけます。しかし、広告は良いイメージばかりを宣伝するものです。ICL手術ではレンズを取り出すことはできますが、目に傷を入れているため完全には元に戻せません。そして、実際には適応条件や合併症などもあることをよく知っておく必要があります。この記事がICL手術をよく考えるきっかけになればと思います。
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本記事について、開示すべきCOIはありません。