まとめ
- 高額療養費制度を利用すれば、高額な医療費の自己負担を抑えることができます
- 年齢や所得に応じた上限額があり、条件を満たせばさらに負担を軽減する仕組みもあります
- 自分が加入している保険の種類は保険証の表面に記載されています
みなさんは、「高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)」という言葉を聞いたことがありますか?
病気やけがで長く入院したり、大きな治療を受けたりすると、医療費がとても高くなることがあります。そんなときに、家計の負担を軽くしてくれるのが「高額療養費制度」です。
この記事では、この制度の仕組みや使い方を、わかりやすく紹介します。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度は、医療費の負担を軽くする公的制度の一つです。1か月の医療費がある一定の金額を超えたとき、その超えた分をあとで支給してくれる制度です。つまり、大きな手術や入院をしても、ひと月に払う金額はある程度でストップする仕組みになっているのです。
ただし、どんなお金でも対象になるわけではありません。
以下のような費用は、制度の対象外です。
- 公的保険がきかない治療 (先進医療や美容のための医療など)
- 入院中の食費や部屋代
- 希望して個室に入ったときのベッド代 (差額ベッド代)
(参考文献1)
年齢や所得で決まる自己負担の上限額
高額療養費制度では、ひと月の上限額が人によって変わります。これは、年齢や収入によって決まります。
70歳以上の場合
70歳以上の方は、外来 (通院) のみの上限額が別途設けられています。入院や家族と合わせた金額も考慮され、より負担が軽減される仕組みになっています。 (画像:参考文献1より)
69歳以下の場合
69歳以下の方も、所得に応じた上限額が決められています。 (画像:参考文献1より)
さらに負担を軽減する仕組み
高額療養費制度には、特定の条件を満たした場合にはさらに負担が軽くなる仕組みがあります。
① 世帯合算
1人では上限をこえなくても、同じ健康保険に入っている家族の医療費を足して上限をこえた場合、まとめて支給されることがあります。
ただし、別々の保険に入っている家族 (たとえば共働きの夫婦) は合算できません。(参考文献1)
② 多数回該当
慢性的な病気で長期間治療を受ける場合、何度も高額療養費の上限額を超えると、より負担が軽くなる制度です。具体的には過去12か月以内に3回以上、上限額を超えた場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が引き下げられます (参考文献1) 。
高額療養費制度の申請方法
高額療養費の支給を受けるには、自分が入っている健康保険に申請書を出す必要があります。郵送でも問題ありません。ただ、お金が戻ってくるまでに3か月くらいかかることもあるので注意が必要です。 (参考文献1) 。
申請先は加入している保険によって異なります。保険証の表面に記載されている名称を確認し、以下の窓口に申請しましょう。
- 健康保険組合
- 協会けんぽ (全国健康保険協会)
- 市町村の国民健康保険
- 後期高齢者医療制度
- 共済組合
申請は2年前までさかのぼってできます (参考文献1) 。過去の医療費も対象となる場合があるので、もし過去に高い医療費を払っていた人は、今からでも申請できるか確認してみてください。
限度額適用認定証を用いればその場の支払いも抑えられる
高額療養費制度では、医療費を一度支払ってからあとで戻ってきますが、「限度額適用認定証」を取得すれば、病院の窓口で払う金額を少なくすることができます。
限度額適用認定証の取得方法
1. 入院前に、加入している医療保険に申請して認定証をもらう
2. 交付された認定証を医療機関の窓口で提示する
この認定証を使えば、大きなお金をその場で払わずに済むようになります。また、後から払い戻しの手続きをする必要もなくなります。 (参考文献1)
手続きに困った時は
高額療養費の手続きで行き詰ったり、自分はいったいどのくらいお金が戻ってくるのかわからなかったりする場合もあるかと思います。そうした場合は、病院ではソーシャルワーカーや患者相談室に問い合わせると良いでしょう。また、がんの場合はがん相談支援センターなどでも相談できます。
高額療養費制度に似た制度
高額療養費制度の他にも医療費の負担軽減を目的とした制度があります。これらの制度も理解して、合わせて活用しましょう。
高額医療・高額介護合算療養制度
高額医療・高額介護合算療養制度は、医療費と介護費をあわせて、1年単位で負担が重くなったときに助けてくれる制度です。
高額療養費制度は「1か月単位」の医療費に対する支援ですが、高額医療・高額介護合算療養制度は「1年単位」で医療費と介護費を合算し、基準額を超えた場合に支給される制度です。 (参考文献1,2)

医療費控除制度
医療費控除とは、1年間に医療費をたくさん払ったときに、税金が安くなる制度です (参考文献1) 。具体的には、「納税者とその扶養する家族が支払った医療費の合計」から「保険金などで補われる金額」と「総所得に応じた定額」を差し引いた金額が200万円を上限に控除されます (参考文献3,4) 。健康保険制度の一種である高額療養費制度とは異なり、所得税の制度です (参考文献1) 。
制度を積極的に活用して、負担を軽減しましょう
公的制度には、高額療養費制度や上記の制度の他にも傷病手当や障害年金、生活福祉資金貸付制度など様々なものがあります (参考文献5) 。こうした制度は闘病している患者さんにとって経済的な負担を軽くしてくれる非常に大切な制度で、受けられるものは是非受けた方が良いものです。
しかし、これらの公的制度の殆どは自分自身で申請しなければならず、そして申請しなければもらうことができません。あまり一般に知られていないものもありますので、この機会に一度しっかりと把握しておきましょう。そして、病気により仕事を休んだり辞めたりしなければならない場合や心身に障害が生じた場合、生活が困窮した場合は公的制度が活用できないかぜひ調べてみてください。
COI
本記事について、開示すべき COI はありません。




